悪役令嬢・スイーツ・ショップ
「このバトンは私に対する挑戦だな?」って感じのバトンを見つけたので勝手に参加。ごめんね。
「らっしゃい、らっしゃい。今日はシュークリームが安いよ!」
「あ、王子見てください。お菓子屋さんがありますよ! みんなのお土産になんか買って帰りませんか?」
学園を外出して街へ赴いたイーツ令嬢が、一緒にデートをしたザート王子におねだりをする。
「そうだな。お金も余裕があるし、何か買って帰るか」
「わーい!」
二人は店へと入っていく。
◆
「らっしゃい。さぁさぁ、どれでも好きな物を選んでくれ」
奥にいる店主が笑顔で出迎える。
「まぁ! ザート王子に汚らわしい庶民が張り付いておりますわね!」
「まぁ! 図々しいったらありゃしない!」
「まぁ! 庶民は庶民らしくしてなさいな」
「まぁ、しかたないんじゃないでしょうか?」
そしてカウンターに詰め込まれた女たちが、一斉に声をあげる。
「う~ん。どれにしようかな~」
「ちょっと」
「何ですか王子」
「何なんだこの店は。カウンターに性格の悪い女がぎっしりと詰め込まれてるぞ」
「これは前世がお菓子だった人たちですよ」
「は? 前世……?」
「この店は前世がお菓子だった人を売っている店なんですよ。こっちのご令嬢がシュークリーム、こっちはカスタードプリン、こっちはショートケーキです」
「そんなの売るなよ!? というかこれ人身売買じゃねーのか、法律違反だろ!?」
「前世が商品だった人は店に並べてもいいんですよ。法律で決まってます」
「何その法律、今すぐ変えたいんだけどっ!」
「とにかくどれを買うか選びましょう。きっとどれも美味しいですよ」
「食う気か!?」
「王子ー。バニラ風味の悪役令嬢といちご風味と悪役令嬢だったらどっちがいいですか?」
「どう違う二択なのそれ!? どれも普通の性格悪い令嬢にしか見えないんだけど!」
「服の色が違います」
「思ってたよりシンプルな違いだった! そんなのどっちでもいいだろうが!?」
「良くありません。私達の友人である騎士のドリアンはいちご風味の令嬢が好きですし、サワーはメロン風味が好きでした。どの令嬢を選ぶかで皆の満足度が変わるんです」
「服変える程度で好み変わるほど尻軽じゃねーよ、私の友人は!」
「まぁ! 庶民が王子に説明をしていますわ!」
「まぁ! 図々しいったらありゃしない!」
「まぁ! 私に任せればいいものを!」
「まぁ、見ず知らずの令嬢よりはいいんじゃないですか?」
カウンターに詰め込まれた女たちが、再び一斉に声をあげる。
「店主さーん、この4番目の令嬢だけ威勢が悪くないですか? もっと鮮度のいいのないんですか?」
「ありゃ、ばれちゃったか。それだけ賞味期限ぎりぎりになりそうなんだよねー」
「威勢で鮮度が決まるの!?」
「よし、じゃあこっちの悪役令嬢はどうかな。前世はシュークリームだよ」
「うおおおおおおおっ! 俺はっ! 庶民といちゃつく王子を! 絶対! 許さなあああああああいっ!」
「まぁ、すごく鮮度が高い令嬢ですね! ねぇ王子、これ買いましょうよ!」
「威勢良すぎて令嬢とは別のものになってない!? というか発言が不穏っ!」
「いたぞ、ここだ!」
すると突如、店の中へと兵士たちが雪崩込んだ。
「な、なんだなんだ。何故に兵士たちがここに……」
「王子! 俺はお前の悪事を見逃さない! お前は外国から違法に献金を貰っていたようだな!」
シュークリーム令嬢が、びしっと指をさす。
「な、そんなの知らないぞ!?」
「知らなくて当然だな。調べてみたところ、イーツ令嬢が王子名義で献金を手引きしていたそうだ」
「な、なんだと!? おい、イーツ、どういうことだ!?」
「……ばれちゃった♪(テヘペロ♪)」
「『テヘペロ♪』じゃねーよ!? 重大な法律違反だぞ!?」
「そういう訳だから、王子は責任を取ってもらうぞ! 連れていけ!」
シュークリーム令嬢が声をあげると、兵士達が王子だけをずるずると引っ張っていく。
「あ、ちょっと! こら! 私は悪くないだろこれ! というかイーツも逮捕しろよおおおおおおおおっ!」
……
「と、言う感じで激しく王子逮捕型のテンプレをこなす、ビター風味の悪役令嬢なんだけど……どうだい、買うかい?」
店主がそう言うと、イーツは笑顔で答える。
「買います」