往生際なんて悪くていいんだよ、そんなもん。
自己満足の産物ですが、読んでいただけたら嬉しいかも、です。
まぁあ読みごたえはないでしょうが、私なりに考えることがあったもんでして。
いや、これ言うとまるで私が失恋したみたいになっちゃいますけど、私そもそも今恋してる暇がないくらい忙しいんで。
ただの妄想です!!
「何酔いつぶれてんの?」
爽香が俺を見下ろしている。純白のドレス、ではなく普段着で。
「うっさい、二日酔いだほっとけ」
「いや、人ん家で酔いつぶれといて何言ってるのよあんた」
確かに。納得しなければならない意見だ、それは。思わず悪い、と言いそうになった。
いつもなら言ってるであろうセリフだったが今日はなぜか口から謝罪の言葉が出てこなかった。
というか出せなかった。
「邪魔だから、帰ったら?」
そういってさえぎられたのもある。
むっとした。だから若干怒っているように聞こえたかもしれない。
「何で帰んなきゃいけないんだよ」
「いや、普通にあんたの家じゃないからよ」
「やだ、帰んねーぞ」
「駄々っ子か……」
帰ろうと思えば一分もかからず帰れる距離だ。
爽香と俺は簡単に言ってしまえば幼馴染である。
それゆえ、お互い今迄を知っている。
知っているからこそ、こんないたたまれない空気になるんだ。
俺は二日酔いのおかげで重たくなった頭を持ち上げ玄関へ向かう。
「ねぇ、あんたは今まで通りあたしの家に勝手に来ていいよ」
「いきなりなんだよ」
「いや、なんかあんた見てたらそう思えてきて」
「余計なお世話だよ。それに、旦那さんがいるのにそんな今迄みたいにヅカヅカ上がれるわけねーだろ」
「……あの人なら何も言わないわよ。私たちの関係を理解してそれでも私と結婚してくれるんだから」
そうか、話したのか。俺なんかと付き合ってたって。
「それでも、俺が絶えらんねぇんだよ」
「あっそ、じゃあいいわ」
そう、それでいいんだよ。
俺とお前が付き合ってたのは十年以上前の話で、過去は関係ないんだから。
「悔しそうな顔してるから言っとくけど、あたしはあの人を選んだことを後悔しないわ。でも、あんたに最後に選ばれなかったのはまだ悔しいと思ってる。あんたが今更後悔したって、もう遅すぎるんだけどね」
「じゃあもし十年前の昨日、お前の誕生日に俺がちゃんと祝えばよかったのか?」
「あんたねぇ、そういうことじゃないって去年も言ったでしょ!」
「ぁ、でも結局はそういうことじゃねーかよ」
「はあ、これだからあんたとはうまくいかなかったのよ」
「は? 何だからだよ」
「あんたは付き合って初めてのあたしの誕生日を家族で祝ったのよ。初めてなんだから二人っきりで祝いたかったあたしの気持ちが分かんないわけ?」
「いや、今までずっとおれんとことお前んとこで祝ってきたから習慣的にそうなるだろ……」
「そこなの」
指をさしていう。
「あんたはあたしを好きだったかもしれない。でもそれは私を女としてではなく、家族の一員として、兄弟みたいに思ってたからよ。そりゃ上手くいきっこないわ」
半分笑いながら涙目でこちらを見つめてくる。
「本当は結婚式を昨日やった人間がしていいことじゃないけど」
目の前に影が差す。
気が付くと爽香の唇と俺の唇が重なっていた。
ついばむようなキスの後、爽香はにっこりと笑っていった。
「これがあんたの人生最後のキスよ。ふふっ、あんたの誕生日は来月よね。そしたらあと二年で魔法使いになれるんじゃない?」
「な、何でそれを?!」
「女の勘ってやつだよ、ワトソン君」
「や、俺はワトソンじゃないが」
「いいのよそんなこと。じゃあね」
颯爽と去っていく。
あぁ、もうこいつは人の女になっちまったんだなぁ。
さすがに人妻は喰えねぇか。
そう思えばあきらめられそうな気がした。
……やっぱあきらめたくねぇけど。
こんな駄文を読んでくださってありがとうございます。いや、むしろ申し訳ありません。