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少々戦いの場面がありますが、グロイ場面は
ないと思われます。
刹那は、人間には出せない速さで走る。
コートの内側のポケットから
持ち運びできる、凶刃を二つ取り出すと
それを両手に持ち、そのまま
戦真っ最中の場へと、突っ込んでいった。
周りが、ざわめく。
驚きの声や、攻撃命令を下す声も聞こえた。
しかし、そんなものは刹那には関係ない。
刹那は、ただ人を殺 すため。
そのために、凶刃を両手に持ち走っている。
刹那に攻撃しようと、一人が銃を撃ってきた。
それを右手の凶刃ではじき返し、
向かってくる相手に、左手の凶刃を突き刺した。
すぐさま右手を下ろし、横にいる相手を切り裂く。
切り裂いたと同時に、左手の凶刃を抜き
思い切り振り回して、後ろから向かってきた
相手の心臓に、突き刺した。
その間に右手の凶刃で、弾をはじき返す。
前から向かってきた相手を蹴り、
左手の凶刃を、相手から抜いて
左横から向かってくる、相手に突き刺す。
刹那はそれを、目にも止まらない速さで、
そして移動しながら、行っていた。
カラスは、人間には出せない速さで走る。
指先の爪を、鋭く伸ばす。
生えるように伸びるその爪は、まるで刃だった。
そのまま、刹那とは反対方向に走り
刹那と離れた場所に、移動する。
周りは騒いでいて、戦争どころじゃないらしい。
刹那を攻撃することに、必死だ。
そして、こちらに気がついた者も騒ぎ出し
向かってくる者もいる。
カラスはそれを見て、微笑む。
そして、両手を伸ばして
両脇の相手に、突き刺した。
両手をすぐさま抜き、右手を前に
左手を後ろに伸ばす。
両方の爪は、相手の肉を抉り
骨が見えるほど、威力が強かった。
右手を斜め上にやり、向かってくる弾を切る。
そのまま横に移動させ、異常な速さの弾丸を
突き刺し、真っ二つに割る。
それを行っている最中に、左手は
向かってくる相手を、次々となぎ倒す
作業を行っていた。
カラスのこの攻撃は、ほんの三秒間での
出来事だった。
三分後。
辺りは、先程とは打って変わって
倒れた人間達で、埋め尽くされていた。
カラスと刹那は、背中合わせで
息も乱さずに、立っていた。
まさに、刃を抑えて解く――
刹那とカラスには、敵はいなかった。
刹那は自分の手を、じっと見詰める。
「・・・なんだか物足りないわ。弱すぎるのよ。人間は」
拳をぎゅっと握り、その手を見詰める。
「・・・やはり、魔物・・・ですか?」
カラスは刹那の横に移動し、
刹那を、一瞬見詰める。
「えぇ・・・。・・・魔物と戦うのは、とても楽しいわ」
刹那は、無邪気に笑う。
それから少し考えて、そしてカラスに向かって微笑む。
「・・・でも、一番楽しいのは、あなたと話すことかしら」
カラスは、少し驚いた素振りを見せた。
それから、嬉しそうに笑った。
「・・・有難うございます」
カラスは手を胸に当て、浅く御辞儀をした。
「もう全員片付けたから、行きましょう」
「お望みのままに」
カラスは刹那を抱き上げ、翼を生やす。
漆黒の翼を翻して、空へと舞い上がる。
刹那は、カラスの顔に近づき
そのままキスをした。
カラスと少女の愛は黒。
血で染まるその地を後に、二人は飛び立ってゆく。