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  作者: 水瀬葎那
1/3

1

そこは、戦場。

無残に朽ち果てた人間が、

地面を埋め尽くすように、転がっている。

皆、動かない。

皆、死んでいる。

動くものは、いない。

ただ一匹を除いて。

それは、真っ黒だった。

真っ赤な戦場に映える、黒だった。

赤の中に、佇む黒。

それは、人の形をしていた。

死に至り、横たわる人間達を

何の感情も篭っていない目で、見渡す。

「・・・他愛もない・・・」

それは、小さく呟いた。

そして、その体は

突如砂になった。

砂は崩れ落ち、風に吹かれる。

そして、砂の中から出てきたもの。

それは、一羽のカラスだった。

カラスは、その黒い翼を羽ばたかせ

空に舞い上がり、どこかへと消えた。



その部屋は、暗かった。

光は、一つの窓から差し込む

日光だけだった。

その部屋の片隅で

少女は、椅子に座っていた。

肘掛に両方の肘を置き、

それはそれは、退屈そうに

椅子に座っていた。

少女は、ふと窓辺に目をやる。

そして、顔を輝かせ微笑む。

「あら。カラス。帰っていたのね」

窓辺には、一羽のカラスが止まっていた。

カラスは、少女に声をかけられると

少女の元へと、飛び近寄る。

少女は、肘掛に置いていた

片方の腕を、少し上に上げる。

カラスは、その腕に

静かに飛び降りた。

少女は、自分の腕に飛び降りた

カラスを、うっとりと見詰める。

「戦場はどうだった?」

カラスはそう、問われると

少女の腕から飛び降り、床に着地した。

そして、砂になる。

砂の中から、人間の形をした

真っ黒なものが、現れた。

「非常に、楽しませてもらいました」

人の形をしたカラスは、片方の手を

胸に当てて、軽く御辞儀をした。

「人間達が、無残にも滅んでいく姿。

その流れ出る血は滞ることを知らず、地を朱に染めていく

その姿は、非常に美しかったですよ」

カラスは、その鋭い目を細めて、微笑む。

少女はそれを聞き、身震いした。

「それはとても美しかったでしょうね・・・。あぁ・・・私も見たかったわ・・・」

その美しさに身悶え、少女は感激する。

「カラス。今度は一緒に行きましょうね」

少女は椅子に座ったまま

カラスの首に手を回し、

カラスを抱き寄せる。

カラスは少しかがみ、

少女の背中に、手を回した。

「お望みのままに」

そして、暗黒のキスをした。

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