↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年と宇宙  作者: 津本ジオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/32

奪還作戦 ゼロアワーマイナス1時間

跳躍艇にノワールがやってきた。

「今度は黒い猫さん?」

ジーンが目を丸くする。

コハクの奴め、ジーンを驚かせようと、さっきの通信のときにノワールの映像を切っていたな。


全身が艶(つや)やかな漆黒の被毛で覆われ、虹彩は鮮やかな琥珀(こはく)色。

鼻先から尻尾の付け根まで約四十センチといったところか。

セレスでの術後、初めて救急救命室でノワールを見たときは、人工眼に不慣れなこともあり、スケール感が把握できなかった。

改めて見ると、やや小柄だ。


「やあやあ、初めましてジーン。ノワールと申します。以後お見知りおきを」

「こんにちは、ノワールさん。猫なのにしゃべるんだね」

「騙(だま)されるな、ジーン。こいつは通信塔の機械知性だ。猫じゃない」

「えっ、本当?」

「それは、正解であり間違いでもあります。私は機械知性ではなくノワール。通信塔の管理を任されております」

「何を言ってるのかよく分からないよ……」

「こいつはそういうやつだ。気にするな」


「ところで、スラスターを持ってきてくれたか?」

本題に入ろう。

「はい、どうぞどうぞ」

床に穴が開き、直径四センチほどのコイン状の物体がせり上がってくる。全部で六枚だ。

「これはどうやって装着するんだ?」

「あなたのボディは要人警護用ロボット『ウルフパック』の隊長機タイプですね。大変よい選択です」

ノワールはそう言うと、ぺちぺちと薄い円柱状の物体を叩いた。

その瞬間スラスターが浮かび上がり、俺の背中、腹、脇腹、胸、尻に装着される。脇腹は左右に一つずつだ。


「これで推力が得られるのか?」

「そうですそうです。『ストラクチャ』を足場にして推力を発生します。超小型なので慣性制御機能は全くありません。ご注意を」

「ふむ、どれほどの加速力がある?」

「機械狼の質量だと最大八Gといったところです。ボディは問題ないでしょうが生体脳にはきついでしょう」

「どうやって動かす?」

「そのボディには制御ソフトが元々入っているんですよ。ヒロの小粋なサプライズでしょうか」

「『豊穣の角(万能自動工場)』で作ったものには、ときどき元のモデルを超えた機能が付加されているが、そいつの仕業か」

「ええ、その通りです。ただし、危険なものは条件が揃わないと、機能が発現しないように制限がかけられていますが」


「いきなり本番は無理だな。少し試したい」

コハクに向かって言う。

「そこの穴から外に出な。跳躍艇から意識をそらすんじゃないよ。空間識失調(バーティゴ)に見舞われる」

コハクの言葉に反応するように壁に穴が開いた。

穴を抜け、淡い照明に照らされた通路を進むと壁に突き当たった。

後ろを振り返ると通って来た通路が塞(ふさ)がっている。


『それじゃ開けるよ』

ボディに内蔵されている通信機にコハクの声が届いた。

前を向くと突き当たりの壁が消え、宇宙の星々が目に入る。

トンと床を蹴って宇宙空間に飛び出す。

跳躍艇に目をやると、今まで通路と思っていたものの正体が分かった。

最初に乗り込むときに使った白い触手だ。今はトランスファー・トンネルのように、通路として機能している。ずいぶんと多機能な触手だな。


尻のスラスターに意識を集中すると前方へ進む。

同じ要領で胸、腹、背、脇腹も片方ずつ試す。六つのスラスターでは回転制御ができない?

「ノワール、これはどうやって回転すればいいんだ?」

『回転軸と回転方向を意識してください。あとは力加減をマスターすれば大丈夫です』

言われたとおり、胸から尻のラインを軸にして、ゆっくりとロールを試みる。

なるほど、思いどおりに動く。


曲技飛行のハンマーヘッドを模した機動(マニューバ)に挑戦。

重力の無い宇宙空間では失速すらもできない。

全ての動きを能動的に制御する必要があるんだな。

ふと思いついて、並列思考でスラスターを制御してみる。

尻のスラスターで前進。胸のスラスターで徐々に速度を殺す。

速度がゼロになる瞬間にヨー軸を中心にして百八十度反転。


同時に胸のスラスターを切り、尻のスラスターで加速を開始。

不格好だが再現できたと思う。

『お見事。ハンマーヘッドと言われるマニューバですね』

「補助電子脳も使いようだな。並列思考で楽に制御できる」

『そこまで使いこなすとは……普段から活用されているのですね』

何かをしながら、いつも回想に耽(ふけ)っているとは言えないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。