793話 脅し? とんでもない
「なぁ、俺もお前の立場なら、自分の大切な孫のことは最大限に守るよ。お前もそうじゃないのか?」
「……」
「もしもお前が孫を想う気持ちがあるなら、今のうちに対策を取っておくべきだ。不幸があってからでは遅いからな」
「……それは脅しのつもりですか? エウロス卿」
「脅し? とんでもない。これは俺の善意からのアドバイスだよ」
どうして『脅し』なんて言葉が出てきたのだろうか?
理解できない。
俺はただ、『可愛い子に万が一のことがあってはならない』と心配しているだけなのに……。
誤解を解くべく、俺は言葉を続ける。
「俺はザルードや教会と仲良くしたいのさ。脅したり、敵対したり……。そんなこと、するわけがないだろう? ウルゴ陛下の治世の下、共に繁栄したいと思っているんだ」
「…………。……分かりました。『助祭』を1名、そして『修道士』や『シスター』を数名。それであれば、開拓開始時から派遣いたしましょう」
「おおっ! 助かるよ!!」
ザルードがなぜか譲歩してくれた。
やはり、世間話はしてみるものだな。
「シフォンちゃんも含まれているのか?」
「……シフォンはまだ12歳です。派遣は不可能。さすがにそれは譲れない一線ですな」
「そうか……」
俺は少し残念に思う。
シフォンは美少女になる可能性を秘めている。
それに、ザルード大司教の孫娘でもある。
俺たち『悠久の風』に引き込めれば、いろいろな利を得られると思ったんだがなぁ……。
(ここは諦めるか……。いや、待てよ? まだ交渉の余地はあるかもしれないな)
俺は思考を巡らせる。
そして、ザルードに向けて口を開くのだった。




