790話 シフォン
俺は大司教ザルードと交渉している。
Sランクパーティ『悠久の風』の強さを改めて強調したものの、ザルード大司教の反応は悪い。
まぁ、『俺たちは強い』なんて口で言うだけなら簡単なことだからな。
ここは何かしらの秘密を明かす必要があるかもしれない。
そんなことを考えていたら、部屋に教会の人間が入ってきた。
俺が先ほど見かけた、金髪の少女だ。
「お祖父様、お茶をお持ちしました」
「……シフォン。ここではお祖父様ではなく、ザルード大司教とお呼びなさい。それに、ここには誰も入るなと言ったはずですよ」
「申し訳ありません、ザルード大司教。ですが、お客様にせめてお茶だけお出ししたいと思いまして……」
シフォンと呼ばれた少女は、ザルード大司教に叱られて縮こまってしまっていたが、それでも気丈に言葉を返した。
俺はその様子を見て、あることを確信した。
「ふふ……。近くで見たら、可愛さがよく分かるな。シフォンちゃん」
「……え? ひっ!?」
俺はシフォンに視線を向ける。
すると、彼女はビクッと震えて怯え始めた。
おいおい、どうして俺がこんなに怖がられているんだ?
「お、お客様とは……エウロス卿のことでしたか……」
「ああ、そうだ。これ以上の粗相があっては困る。シフォン、お茶を置いてすぐに出ていきなさい」
「は、はい……。分かりました……」
ザルードは孫娘に冷たく接する。
彼女はビクビクしながらも、指示された通りにテーブルの上にティーセットを置いた。
そして、すぐに部屋を出ていこうとする。




