782話 寄付という名の賄賂-3
「……素晴らしい信仰心ですね。では、ありがたく寄付は受け取らせていただきます。あなたに神の御加護がありますように」
「ありがとう」
俺は笑顔を浮かべる。
すると、ザルードの表情がわずかに緩んだ気がした。
(よし、掴みは上々だな)
俺は内心ほくそ笑む。
寄付をすることで、俺はザルードに好印象を与えることに成功した。
先ほども触れたが、この世界には様々な権力や組織が存在している。
貴族家、冒険者ギルド、商業ギルド、教会などだ。
しかし当然、それぞれの組織で得意とする分野は異なる。
教会は宗教的な権威を有している上、治療魔法使いや神殿騎士といった戦力も保有している。
一方で、金銭面ではあまり恵まれていない。
資金源は主に寄付によって得ているからだ。
(俺は冒険者としてガンガン稼がせてもらっているからな……。それに、貴族としてはウルゴ陛下から褒美をもらったし……)
冒険者には権威がほぼ存在しない。
だが、自分に戦闘能力さえあれば、いくらでも稼げる可能性がある。
そして俺のように貴族として取り立てられる可能性まである。
俺はウルゴ陛下との謁見で、たくさんのものを得た。
子爵位。
俺がリーダーを務める『悠久の風』のSランクパーティへの昇格。
女騎士ナディア。
宝剣ラティオ。
称号『西方の開闢者』などである。
さらにおまけみたいな扱いで、いくばくかの金貨まで受け取っている。
元々稼いでいる俺にとってはさほど大きな額でもないが、一般的に見れば大金だろう。
ザルードに渡した金額は、そこから捻出されたものだ。
(寄付は寄付だが……実質的には賄賂だな)
俺は苦笑いをする。
しかし、これも開拓事業を成功させるため、ひいては世界滅亡の危機を回避するためだ。
態度が軟化したザルードに、俺は本題を切り出すことにしたのだった。




