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765話 企み【マデリン侯爵side】-1
「ちぃっ! 忌々しい成り上がり者め!!」
バルドゥール王国の大物貴族――マデリン侯爵は、酒の入った杯を床に投げつけた。
高価な陶器製の器が割れ、飛び散る破片が彼の足下にも散らばる。
ここはマデリン侯爵が王都に所有する邸宅の一室だ。
普段は客人を迎え入れる応接間として使われている部屋だが、今はマデリン侯爵と部下の男2人しかいない。
「卑しき平民風情が、よもや子爵位を得るなど……。絶対に許せぬ!」
マデリン侯爵は苛立っていた。
理由は単純明快だ。
先日、この国の新たな英雄が誕生したからである。
名はコウタ・エウロス子爵。
平民から貴族へと取り立てられた男だ。
「私どもも、冒険者に有望なルーキーがいるという情報は掴んでいました。テツザン杯で優勝し、ブラックワイバーンを討伐し、『黒狼団』を壊滅に追い込んだと……」
マデリン侯爵の部下の男が言う。
彼らとて、様々な情報網を持っている。
それによって得た情報を元に、『悠久の風』に粉をかけようとしていた。
少し目立っている程度の平民冒険者など、いくらかの金を与えれば便利な手駒にできる。
彼はそのように考えていた。
しかし――




