724話 ありがたき幸せ
マデリン侯爵がウルゴ陛下に提案をした。
国が所有する『宝剣ラティオ』を俺に与えるというものだ。
「『宝剣ラティオ』をエウロス卿に与えれば、彼の影響力はますます増すことになるが……」
「そうでしょうとも。彼には、バルドゥール王国の繁栄のために存分に力を発揮していただかねばなりません」
ウルゴ陛下の言葉を受け、マデリン侯爵が白々しく答える。
国の発展を願う貴族としては、ごもっともな意見ではあるが……。
俺は実質的にエルカディア侯爵派に属している。
俺が力を得れば、マデリン侯爵派にとってマイナスだ。
なのに、なぜそんな提案をする?
「……ふむ。エウロス卿よ。そなたはどう考える?」
「……」
ウルゴ陛下が、俺に水を向けた。
俺に判断を委ねてきたか。
まぁ、答えは既に決まっているが……。
「ありがたき幸せにございます」
俺は恭しく礼をして、マデリン侯爵に視線を移した。
「おぉ! 分かっていただけますか!!」
マデリン侯爵が嬉しそうな表情を浮かべる。
だが、その裏には何かありそうな気配を感じる。
「……よかろう。本人がそう言うのなら、余からは何も言わぬ。マデリン卿の進言を受け入れよう」
「はっ!」
「私の進言を受け入れていただいた陛下の寛大なお心に、感謝いたします」
ウルゴ陛下が許可を出し、俺とマデリン侯爵が頭を下げる。
そして――




