723話 宝剣
「ふむ……。具体的には?」
「エウロス卿に『宝剣ラティオ』を下賜されてはいかがでしょうか?」
「なに!?」
マデリン侯爵の発言に、周囲の空気がざわついた。
それも当然だ。
彼が言及した『宝剣ラティオ』といえば、王家のみが所持することを許された聖なる武具だ。
歴代の国王の中には、この剣で邪悪な存在を斬り殺したという逸話を持つ者もいる。
MSCにおいても、その性能は折り紙付きだった。
それを、俺みたいな一介の子爵に与えろと?
しかも――
「そなたがそれを提案するのか? マデリン卿よ」
「何かおかしなことを言っておりますかな? 私はバルドゥール王国の繁栄を願い、より良いと思われる提案をしただけです」
白々しいものを感じざるを得ない。
確かに、バルドゥール王国自体が繁栄すれば、マデリン侯爵にも利はある。
だが、それを主導したのがエルカディア派の俺であれば、マデリン派の力は相対的に弱まる。
結果的にトントン――いや、マデリン侯爵にとっては損となる可能性も高い。
マデリン侯爵が、自分の利を度外視してまで王国全体の繁栄を願っている?
……とてもじゃないが、信じられないな。
果たして、ウルゴ陛下はどういった反応を示すのだろうか――




