717話 どこの馬の骨
「では、すぐにでも簡易的な叙爵式の準備をさせよう」
「ありがとうござ――」
「お待ちくだされ! 陛下!!」
俺たちのやり取りに口を挟んできた者がいた。
彼は、マデリン侯爵だ。
自派閥の騎士団長が倒された今、いったい何を企んでいるのやら。
「なんだ? マデリン卿よ」
「陛下、お言葉ではありますが……エウロス卿は元平民でございます。しかも、調べによればバルドゥール王国の生まれではなく、どこの馬の骨とも知れません。そのような者に、子爵位を与えるというのはいかがなものでしょうか」
「ほう……。余の判断に異を唱えるというのか」
ウルゴ陛下が鋭い視線を向ける。
マデリンは一瞬だけ怯んだものの、それでも言葉を続けた。
「いえ……。陛下のお考えを否定するわけではありません。ただ、あまりにも例外的な措置は禍根を生みます」
「ほう?」
「平民から騎士爵への叙爵は過去にたくさんの例がありますし、平民から男爵への叙爵も過去にあったこと。ですが、平民から一代で子爵になった者は聞いたことがありません。エウロス卿の場合も、前例に従い今代では男爵までに留めるのがよろしいかと思います」
「なるほど……。確かに、その通りかもしれぬな」
ウルゴ陛下が頷く。
そこで引き下がるのかよ。
おいおい、もっと頑張れって!
俺は心の中でツッコむ。
「確かに、特例中の特例を認めてしまうと、それが先例となってしまう」
「そうでしょうとも。エウロス卿の素質は私も知るところですが、ここは王国全体のバランスを保つためにも――」




