699話 騎士団長の思い
「ははーん、分かったぞ」
「何がだ? 何が分かったというのだ? エウロス卿」
「騎士団長、お前はナディアのことが好きなんだろう? だから、彼女が俺にもらわれるのが嫌なんだな?」
「は……!? そ、そんなわけがあるか! 私は誇り高き騎士団長だぞ! 公私混同などするはずがない!!」
「いやいや、隠さなくてもいいって。ナディアはいい女だからな。男なら当然の感情だと思うぜ」
「貴様……!!」
騎士団長に手をやる。
と同時に、周囲が騒がしくなった。
特に目を剥いているのは、マデリン侯爵だ。
「そ、それ以上はやめるべきですぞ。ここは謁見の間……陛下の前です。いくら何でも不敬です」
「ぐ……。あ、ああ……」
騎士団長が渋々といった様子で手を引っ込める。
一方、ウルゴ陛下は楽しげに笑っていた。
「ふははは……。面白いではないか、エウロス卿。そなた、なかなかの観察眼を持っておるな」
「いえ、それほどでも……」
「いや、謙遜する必要はない。余が見込んだだけのことはある。そなたには期待しておるぞ」
「ありがとうございます」
謁見の間で騎士団長が剣を抜きかけたというのに、ウルゴ陛下の態度は実に穏やかだ。
この程度、大したことないと言わんばかりである。
やはり、ウルゴ陛下は傑物だ。
(俺には世界滅亡に立ち向かうという使命がある。とんでもない愚王なら、いつかは反乱を起こす必要もあったが……。ウルゴ陛下になら、少なくともしばらくは安心して仕えられる)
俺はウルゴ陛下に対して好感を抱く。
同時に、騎士団長に対する警戒心を強めた。




