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698話 2人の意図

 謁見の間に、不穏な空気が流れている。

 俺がナディアに手を出していたことがバレてしまったためだ。

 彼女はウルゴ陛下の近衛騎士。

 そんな者に手を出していたとなれば、最悪は反逆罪に問われてしまうらしい。

 救いがあるとすれば、当のウルゴ陛下が俺寄りの立場を取ってくれていることだろう。


「ふむ……。ならば、エウロス卿には開拓を頑張ってもらうしかあるまい。元より予定していた、エルカ西部地域の開発に励め。もちろん、そこの女騎士を連れてな」


「ありがとうございます!」


 俺は感謝の意を示すために頭を下げる。

 これでひとまずは助かった。

 そう思ったのだが――


「陛下! それでは甘すぎますぞ!!」


「然り! エウロス卿に爵位を与えられたのは、元より開拓事業に従事させるため。ナディア殿の件とは、関係ありませぬ!」


 マデリン侯爵と騎士団長が口を挟む。

 彼らとしては、俺がナディアという人材を借り受ける件をなかったことにしたいらしい。


(まぁ、マデリン侯爵の意図は分からなくもないが……)


 マデリン侯爵とエルカディア侯爵は派閥争いをしている。

 そして、俺は現状ではエルカディア派閥と見なされている。

 俺率いる『悠久の風』はエルカで賊を掃討したからな。

 そこへ、エルカディア侯爵の遠戚にあたるナディアまでもが『悠久の風』に加入することになれば、もはや完全にエルカディア派閥の一員だ。

 俺という将来有望な貴族が加わったとなれば、エルカディア派閥が勢いづく。

 マデリン侯爵はそのように考えているのだろう。


(ただ、騎士団長が難色を示しているのは分からないな……)


 優秀な部下を引き抜かれるのは困る――彼は概ねそのような説明をしていた。

 だが、それだけの理由で陛下に異論を唱えるものだろうか?

 どうにも疑わしい。

 俺は騎士団長の真意を探るべく、彼を観察する。

 そして、一つの可能性に思い至った。

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