692話 遠戚
「ふむ……。エウロス卿はその者を選んだか。その者は、確かエルカディア侯爵の遠戚に当たる者だな?」
ウルゴ陛下がエルカディア侯爵に視線を向ける。
ナディア・エルカインド。
そういえば、名前に少しばかり似たような響きがあるな。
「はっ! 彼女は私の遠い親戚にあたる者になります」
「なるほど。これも天命か? そなたの領内にはびこる盗賊団を掃討したエウロス卿のパーティ……。そこにそなたの血縁者を加入させるというのは」
「そうですな。陛下の近衛兵という名誉ある職務に就いていた彼女ですが、これも何かの縁。エウロス卿の助けとなるため、ひいてはバルドゥール王国のさらなる発展のため、彼女も喜んで力を貸してくれることでしょう。……そうだな? ナディア・エルカインドよ」
エルカディア侯爵が笑みを浮かべつつ、ナディアに視線を向ける。
彼女がエルカディア侯爵の遠戚にあたるのは事実なようだ。
まぁ、身元不明な者がそうそう近衛兵に抜擢されたりはしないか。
他の近衛兵にも、おそらくは貴族の遠戚者がいたりするのだろう。
「…………」
「どうした? ナディア・エルカインド。そなたが不服なら、エウロス卿には別の者を選ばせることも可能だが?」
「……はっ! い、いえ! 謹んでお受けいたします!!」
ウルゴ陛下の声を受け、ナディアは慌てて返答する。
その表情は、緩みかけた唇を必死に引き締めようとしているようだった。
可愛いヤツめ。
俺に選ばれたことが呆ける程に嬉しいか。




