691話 選ばれたのは…
「いえ、今のは胸を揉んでみただけです。本命は別にいますよ」
「……そうか」
「はい」
俺は再び歩みを進める。
目指すは、いまだに余裕のある雰囲気を纏っている女騎士だ。
立っているだけなら半数弱の騎士が残っているが、ちゃんとした状態で立っているのは数人しかいない。
その中で、女性は彼女だけだ。
「俺とともに来い。ナディア・エルカインド」
「……!」
ナディアが驚愕の表情で俺を見る。
そんなに驚くことか?
ぶっちゃけ、俺にとっては半ば出来レースみたいなものなんだが……。
エルカの町まで『悠久の風』を迎えに来てくれたのは彼女だし、道中では一夜を共にしたこともあった。
戦闘能力という点で見ても、少なくとも女性騎士の中では最も有望だ。
(ほう……。やはりエウロス卿は『こちら』につくか……)
(ぐぬっ! 我がマデリン侯爵家の血筋を弄びよって……! おのれ……!!)
エルカディア侯爵とマデリン侯爵が呟く声が聞こえる。
おそらく、声が漏れていることに気付いている者は俺以外にいないだろう。
チートにより多種多様なジョブを育てている俺の聴覚だからこそ聞き取れる声量だ。
それにしても、何やら不穏な空気を感じるな……。
俺がやったことと言えば、いい胸をしている女騎士の体を堪能した後、ナディアを選んだだけだが……。




