681話 忠告
「なに、簡単なことだ。我がエルカの町に巣食っていた厄介な賊を一掃してくれた英雄に、一言挨拶をしておこうと思ってな」
「なるほど。そういうことか」
俺は納得する。
彼は侯爵であり、精鋭を有していると聞いている。
しかし、エルカは領都ではなく優先度が低い上、王命により別件も抱えていた。
半ば放置気味となっていた『毒蛇団』だが、それを討伐したのが俺というわけだ。
「それで? 俺はお眼鏡に叶ったのかい?」
「ああ。凄まじい魔力を感じる。我ら改革派としても、貴公の活躍には期待したいところだ」
「改革派?」
聞き覚えのない単語だ。
俺は聞き返すが、彼はそれに答えなかった。
「一つ忠告しておいてやろう。マデリン侯爵には気をつけろ」
「マデリン……?」
どこかで聞いたことのある名前だ。
どこで聞いたのだったか……。
ああ、そうだ。
アスター騎士爵が言っていたな。
俺を気に入らない貴族勢力がいると。
その代表格がマデリン侯爵だったはずだ。
「分かった。忠告をありがたく受け取ろう」
「では、私はそろそろ行くぞ。貴公の陛下への謁見には、私も参列する予定だ。また会おう、エウロス卿よ」
「ああ。またな、グラン・フォン・エルカディア侯爵」
「うむ」
そう言い残し、彼は部屋から出ていく。
こうして、俺はエルカディア侯爵と初めて会ったのだった。




