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677話 世も末だ

「エウロス男爵殿! 出発の準備はまだなのか?」


「おっと、すまんすまん。待たせてしまったな、ナディア」


 俺は振り返りつつ答える。

 そこには、銀髪の女騎士がいた。

 彼女はナディアだ。

 俺たち『悠久の風』とも一定の関わりを持つ。


 俺がウルゴ陛下から男爵位を授かった際には、腕試しのためにいきなり斬りかかってきた。

 その後『毒蛇団』を無事に掃討した際には、王都からエルカまでわざわざ迎えに来てくれたのだ。

 無事に王都に到着してからは、また別行動となっていた。

 そして今日、謁見の日に俺を迎えに来たのも彼女だったというわけだ。


「本当にエウロス男爵殿は女好きだな……。謁見の日にまでイチャつく奴なんて、聞いたことがないぞ」


「そうなのか?」


「当然だろう。陛下と謁見するともなれば、みんな緊張するものだ。それをほぐすために、仲間に見送ってもらうというのは理解できる。しかし、それでも限度というものがあるだろう」


「いやいや、これが俺だからさ」


「まったく……。これほどの女好きが男爵とは、世も末だ」


 ナディアが嘆息する。

 一見すると、なかなかに無礼な態度にも思える。

 男爵である俺を侮辱しているというのもあるし、拡大解釈すれば任命者であるウルゴ陛下すら侮辱しているようにも聞こえるからだ。

 しかし、俺は彼女の言葉の裏に隠された意味を察していた。


「ほら、そんなにスネるな。俺はお前のことも気に入っているからさ」


「ふ、ふん……! そんな言葉で騙されるものか」


「ははっ。まぁ機嫌を直してくれよ。今日はサプライズもあるんだ」


「サプライズだと? そんなもので我が……んぁっ! こ、こら! 変なところを触るな」


「いい反応するじゃないか。続きは……馬車の中でするか。さぁ、御者よ! 出発だ!!」


 俺は御者に命令を出す。

 こうして、俺は『悠久の風』の面々に見送られつつ、女騎士ナディアとともに王城に向かい始めたのだった。

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