674話 マデリン侯爵
「マデリン侯爵……ね。覚えておこう」
初めて聞く名前だ。
しかし、俺のことを気に入らないという情報を聞けば、自然と俺からマデリンに対する感情も悪化する。
アスター騎士爵が偽の情報を俺に渡しているという可能性が0ではないことに留意しつつも、マデリン侯爵には注意を払っておく必要があるだろう。
「しかし、そんな情報を俺に教えてもよかったのか?」
「はい。本来であれば伝えるつもりはありませんでしたが……。本日、エウロス卿の人となりや能力を知ることができました。私はマデリン侯爵よりも、エウロス卿を信頼できると判断しておりますゆえ」
「おいおい、侯爵よりも男爵を信じるのかよ? 俺が言うのも何だが、それで貴族としてやっていけるのか?」
王家、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵。
貴族の中でも上位である侯爵と、末端に近い男爵。
なのに、アスター騎士爵が信頼するのは俺らしい。
「それほど、エウロス卿が規格外の存在だということです。アスター騎士爵家の存亡は、エウロス卿の双肩にかかっていると言って過言ではありません」
「ははは……。それはまた大袈裟な話になったな。勝手に期待されても困るが、まぁいいか。俺の味方でいる限り、なるべく損はさせないさ」
「はい、よろしくお願いします。……それでは次回のマナー指導の日程ですが――」
「うむ」
俺とアスター騎士爵で、次回の日程を詰めていく。
こうして、俺はアスター騎士爵邸での初日のマナー指導を終えたのだった。




