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673話 慎重派

「ありますとも。私のような弱小貴族が生き延びていくためには、必要なことですから」


「おお。さすがだな」


 俺は素直に感嘆した。

 貴族としての一般マナーや常識などは、重要なものではあるが情報としての希少性はあまりない。

 貴族であれば誰でも知っていることだからだ。

 一方、有力貴族の動向ともなれば、そうはいかない。

 生の情報を手に入れるには、相応の伝手が必要になる。


(アスター卿に、そういったツテがあるとは思っていなかったが……)


 しかし、その予想に反して、アスター騎士爵はあっさりと答えた。


「実は、エウロス卿への男爵位の授与につきまして、難色や懸念を示していた貴族たちがいたのです」


「なるほど。まぁ、それも当然だろうな」


 なにせ、平民から男爵への昇進だ。

 普通に考えたら、まずあり得ない。

 準騎士爵ならお気軽に、騎士爵ならほどほどに、準男爵なら慎重にという具合で叙爵が決められるはずだ。

 平民から男爵への一足飛びの叙爵は、おそらく数年……下手をすると数十年単位でなかったことかもしれない。

 授与に対して難色や懸念を示す貴族がいるのも、当然のことだ。


「最終的にはウルゴ陛下が押し切られました。陛下の意見を聞いて、慎重派の多くも折れざるを得なかったのです」


「なるほどな」


「とはいえ、エウロス卿に対する疑念や反発を完全に抑え込むことはできず……。水面下では、様々な策謀が繰り広げられているようです。特に、マデリン侯爵はエウロス様が気に入らないご様子でして……」

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