667話 アスター騎士爵の屋敷
「ひ、ひどい目に遭いました……」
「すまんすまん。うっかりしていた。許してくれ」
気絶したアスター騎士爵だが、しばらくすると目覚めた。
俺は彼へ誠実に謝っておく。
爵位も戦闘能力も俺の方が上とはいえ、貴族歴が少しばかり長い彼は便利そうだからな。
敵対するのは避けておきたい。
「ま、まぁいいでしょう。事故ということにしておきます」
「悪いな」
「構いませんよ。むしろ、あれほどの殺意を向けられて殺されなかっただけで、なぜか儲けたような気分ですから」
それは錯覚というものだ。
彼がしたことと言えば、俺に了承をもらった上で自邸のメイド少女に手を出そうとしただけ。
本来であれば、俺がキレる要素はどこにもなかった。
「しかし……。改めて感嘆するよ。ここがアスター卿の屋敷か」
俺は屋敷内を見回しながら、そう言った。
アスター騎士爵の家は、なかなか立派なものだった。
天井は高く、部屋も大きい。
王都にある他の貴族と比べても、遜色のないレベルだろう。
一般人とは比べるべくもない。
「ありがとうございます。貴族街の中ではやや端に位置しているため、少しばかり不便ですが」
「そうか? さしたる差でもないし、広さの方が重要だろう。多くの妻を住ませるなら、このくらいの広さは必要だ」




