662話 メイド少女
いや、これは先行投資だ。
この苦行を超えれば、アスター騎士爵とその妻の関係性が改善される可能性がある。
そうなれば、俺からアスター騎士爵へ大きな恩を売れるというわけだ。
そんなことを考えつつ、俺は彼へのレクチャーを続けていく。
「おらおらぁっ! どうだ!? 腰使いを感じているか!?」
「は、はいいぃっ! 素晴らしい動きですぞぉおっ!!」
「そうか! 嬉しいことを言ってくれるじゃないか! それじゃあ、もっと激しくいくぜぇっ!」
「来てくださいっ!!」
俺とアスター騎士爵は、馬車の中でついうっかり高ぶってしまった。
野郎同士のレクチャーとはいえ、腰を振っていればそういう気持ちにもなってしまう。
そんなときだった。
「あ、あのぉ……。屋敷に到着してずいぶんと経ちましたが、何か問題でも発生したでしょうか? ――って、ええええぇっ!?」
メイド少女が馬車の中を覗いてきたのだ。
タイミングが悪い。
ちょうどレクチャーが最も盛り上がっているときに……。
「あ、いや。違うんだ。これはだな……」
「き、貴族様同士の禁断の関係……! まさか男同士だなんて……!! 特大ニュースですぅ!!!」
俺の言い訳も聞かず、メイド少女が何やら盛り上がっている。
……これはマズイ展開だ。
結局、彼女に納得してもらって口を閉じてもらうまで、かなりの時間を要したのだった。




