655話 タイミング
「まぁ、普通は準騎士爵だけでも十分にすごいことだろ? ギリギリとはいえ、騎士爵を授かったアスター卿は尊敬に値すると思うぞ」
俺は素直な感想を述べる。
言うまでもないことだが、ほとんどの平民は平民のまま生涯を終える。
一部の冒険者や騎士は、武功を上げて平民から準騎士爵位という栄誉を受け取れる。
アスター騎士爵のように平民から騎士爵になることができれば、成り上がりとしては十分に成功したと言っていい。
「いえいえ、エウロス卿に比べれば私など大したことはありません」
アスター騎士爵が謙遜する。
確かに、俺は平民からいきなり男爵になったわけだが……。
さすがに例外中の例外だと言っていいだろう。
「俺の場合はタイミングが良くてな。エルカに手頃な迷宮があったので功績を上げられたし、エルカ西部には未開拓地域が広がっていたからな。それで運良く出世できただけだ」
「そういう意味では、私もタイミングが良かったのかもしれません。いや、悪かったというべきでしょうか。王都近郊に、未開発の山間部がありましたから」
「へぇ? それがアスター卿に騎士爵を授与された件と関係しているのか?」
俺はそう尋ねる。
数少ない貴族の知り合いだ。
ここは適度に情報収集をさせてもらうことにしよう。




