648話 出発
「ちょっ!? 待て待て待て! 何をやっているんだ、お前たちは!」
俺は慌てて声を上げた。
しかし、彼女たちの動きは止まらない。
そんなとき、ようやく外からの助け舟が入った。
「し、少々お待ちください! 今回のマナー講習は、エウロス卿のみに行う予定でして……」
アスター騎士爵だ。
彼がなんとか止めようとしてくれているようだった。
「あら? そうでしたか? わたくしはてっきり、全員に対して行われるものかと……」
「……ボクもそう思っていたのです」
「同じくです……」
ローズ、ミナ、チセがそれぞれ言った。
他のみんなも、同じように勘違いしていたようだ。
(そうか……)
考えてみれば当然のことだよな。
マナー講習を受けることになるのは、王城へ招聘された者だけだ。
そして、王城へ招聘されるのは、男爵家の当主である俺しかいないのである。
それ以外の面々が受けることはないのだ。
「はぁ……。狭かったよ……」
「へへっ。なんだか、ちょっとだけ楽しかったけどな!」
ユヅキとリンに続き、みんなは大人しく1人ずつ馬車から降りていく。
「コウタ坊、頑張ってくれよな」
「か、陰ながら応援していますぅ。コウタさまぁ」
最後にミルキーとルンを始めとしたみんなからの激励を受け、俺とアスター騎士爵を乗せた馬車はゆっくりと動き出したのだった。




