645話 マナー講習
アスター騎士爵が、宿屋前まで俺を迎えに来てくれた。
何やら、王城へ俺を招聘するという話があるらしい。
「それで? そのことを伝えるためだけに、アスター騎士爵は俺を迎えに来てくれたのか?」
「まさか! 本日はエウロス卿に、貴族のマナーについてご教授させていただこうと思いまして」
「……マナー講習ってことか?」
俺が尋ねると、アスター騎士爵は大きく頷いた。
「左様でございます! 王城へ参上いただくとなれば、それなりの礼儀が求められますから」
なるほどな。
それはありがたい話だ。
正直なところ、ちゃんとしたマナーには疎い部分があるからなぁ……。
日本人としてのビジネスマナーだけなら、社畜として最低限身につけているけど……。
貴族としてのルールについてはさっぱりだ。
そのあたりの知識を補ってくれるというのなら、喜んで受けさせてもらおうじゃないか。
「分かったよ。よろしく頼む」
俺がそう答えると、アスター騎士爵は満面の笑みを浮かべた。
彼は大きく頷くと、意気揚々と告げた。
「お任せください! それでは早速参りましょう。こちらの馬車へどうぞ」
そう言って示された先には一台の馬車があった。
貴族御用達の高級車といった雰囲気だな。
まぁ、彼は騎士爵だし、最高級というほどではないだろうが……。
そんなことを考えていると、アスター騎士爵が言った。




