631話 大変です
(次はシルヴィやユヅキたちを連れてこよう。チセやヒナタも喜びそうだな)
俺はそんなことを考える。
ちなみにだが、この食事の金は俺のポケットマネーから出すことになる。
普段の食事はパーティ資金から出しているのだが、さすがにこうして新しい女を狙うための食事代をパーティ資金から出すわけにもいかないからだ。
俺たち『悠久の風』の財布はある程度共有している一方で、ある程度は個人で管理するようにしている。
全収入の内7割以上をパーティ資金として使用し、残りの3割をパーティ内で分けている。
当初はパーティ内で均等に配分してきたが、人数が多くなりパーティ内の力量差が開いてきたこともあり、分配の割合を調整するようになった。
リーダーの俺、サブリーダーのシルヴィ、古株のユヅキあたりの配分は大きい。
一方で、新入りのチセやヒナタなどはそこまで大きな割合ではない。
とはいえ、『悠久の風』はAランクパーティだし、収入の総額自体がかなり多い。
割合としては小さくても、実際の額としてはそれなりの数値になる。
チセやヒナタは不満を言うどころか、目をキラキラさせながら喜んでいたほどだ。
まぁ、そんなわけで『悠久の風』は上手く回っているのである。
そんなことを考えながら、最後の一切れを口に入れようとしたその時――
「た、大変です……!」
タニアが唐突に声を上げた。
見れば、彼女は顔面蒼白になっているではないか。
一体どうしたのだろう?
まさか毒でも盛られていたとか?
いや、それは考えにくいな……。
もしそうだとしたら、俺が気づかないわけがない。
そもそも、このような高級レストランでそんなことが起きるはずがないのだ。
それとも、何か別の理由があったりするのだろうか?
いずれにせよ――
「落ち着け、タニアちゃん。いったいどうしたんだ?」
俺は彼女を落ち着かせることにした。




