630話 うまい!
俺はタニアと夕食を楽しんでいる。
SSSSSランクのステーキと高級酒を待っているところだ。
それにしても――
(ふぅ、なかなかいい雰囲気になってきたな)
俺は心の中でほくそ笑んだ。
タニアのように、ある程度自立したプライドの高い女というのは、こうして貸しを作っていくのが一番なのだ。
「お待たせいたしました」
そんなことを考えていると、店員の男がやって来た。
手には二つの皿を持っている。
俺たちの前に置かれたステーキを見て、思わず息を呑んだ。
「おお……!」
美しい赤身肉だった。
分厚い鉄板の上でジュウジュウと音を立てているその様は圧巻である。
食欲を誘う香りもまた素晴らしい。
「これが最高級品のSSSSSランクのステーキですか……! 美味しそうですね……!」
感嘆の声を漏らすタニア。
俺に借りを作ってしまうことはようやく許容できたようだ。
目の前のステーキの魅力には抗えない様子である。
そんな彼女の顔を眺めながら、俺は言う。
「冷めないうちに食べようぜ」
「そうですね! いただきます!」
元気よく手を合わせるタニア。
そんな様子を見て、俺もまたナイフを手に取った。
まずは一口サイズに切り分けた肉を口へと運ぶ。
(う……うまい!!)
口の中で肉の旨味が爆発した。
いや、爆発という表現は少し大げさか?
ともかくそれくらい衝撃的な美味しさだったのだ。
歯ごたえもあり、噛むたびにうま味が溢れ出てくる。
舌触りも滑らかで、脂っぽさを全く感じない。
まさに極上のステーキである。
俺は夢中になってステーキを食べ進めていった。
ふと視線を上げると、タニアも夢中で食べているようだった。
あの様子なら、彼女も満足してくれていることだろう。
(しかし……本当に美味いな……)
これだけ美味しいものならば、多少値が張っても納得できるというものだ。
いや、むしろ安いのではないか?




