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627話 タニアとの食事会

「夫がいても関係ないさ。俺が奢りたいって言ってるんだから気にするなよ」


「え、ええと……。しかしですね……」


 タニアはまだ抵抗を続ける。

 結構頑固な性格だな。

 いや、頭が良いと表現するべきか。

 普通の感覚なら『奢ってくれる? タダメシじゃん。ラッキー』となるはずだからな。


 しかし彼女は、『ただより高いものはない』という考えを持ち合わせているようだ。

 さすがは王都冒険者ギルドの受付嬢というべきか。

 それとも、これが彼女の生来の性格なのだろうか。

 いずれにせよ、なかなか手強そうだ。

 ここは――


「何度も言わせるな。Aランク冒険者にして男爵でもある俺が奢ってやると言っているんだ。お前は黙ってそれを受け取るだけでいい」


 高圧的な態度で接することにした。

 こうすることで相手の意思を尊重しつつも強引に事を運べるのだ。

 いわゆる『俺様系』というやつだな。


「うぅ……」


「俺からの厚意を無下にしたければ、好きにするがいい。だがその場合、王都冒険者ギルドにお前の席は無いものと思いたまえ」


 もちろんハッタリである。

 そんな権限など俺には存在しない。

 とはいえ、王都冒険者ギルドのギルマスは、俺に対して相当に下手に出てくれていたからなぁ……。

 ウルゴ陛下や女騎士ナディアとのツテも持っているし……。

 もしかしたら本当に実現してしまうかもしれないぞ?


 まぁ、その時はその時で考えよう。

 今はとにかくタニアを落とすことが最優先だからな!

 というわけで――


「な? ここは素直に甘えておけって」


「……わ、わかりました」


 よし、勝った!

 これで今日の食事会で彼女を落とせる可能性が一回り上昇した。

 え?

 見立てが甘すぎるって?

 大丈夫だ、問題ない。


 こういうプライドの高い女だからこそ、『この食事会の費用は相手が負担している』という事実に付け込めばコロッと落ちるものだ。

 逆に何も考えていない女なら、飯を奢ったぐらいでは何も思わない可能性があるので、別のアプローチが必要だが……。

 今回のタニア攻略戦は、この方向性でいけると思う。


「俺はこのSランクステーキを頼むけど、タニアちゃんはどうする?」


「……えっと、私はその一番安いメニューで十分です」


「遠慮しなくていいんだぞ?」


「いえ、本当に大丈夫なんです」


 せめてもの抵抗といったところか。

 奢られることは許容したが、あくまでも対等な関係であることを崩そうとはしないつもりのようだ。

 ふむ、どうしたものか……。


(よし)


 俺は妙案を思い付いた。

 さっそく行動に移すとしよう。

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