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622話 これは正当防衛だよ

「腕を折る必要はなかっただろうが! ただのナンパだったんだぞ!!」


「そうだそうだ! それに、リーダーは俺たちのパーティの要なんだ!!」


「リーダーが欠けちゃ、冒険者活動に支障が出ちまう! どうしてくれるんだよ!!」


 そう言いながら、ユヅキたちに詰め寄る男たち。

 確かに、腕の骨が折れた状態で冒険者を続けるのは難しいだろう。

 冒険者稼業を続けていれば、怪我を負うことは珍しくない。

 特にダンジョン探索などをしていれば尚更だ。

 軽傷なら無理してでも活動を継続することもあるが、骨折となると話は別だ。

 安静にして、適切な治療を受ける必要がある。


「はぁ? そんなの知らないよ」


 そんな男たちに対し、ユヅキは吐き捨てるように言った。

 彼女は心底呆れているようだ。

 そんな彼女の態度に腹を立てたのか、男たちの一人が声を荒げた。


「なんだとテメェ!?」


「だってそうでしょ? そっちが絡んできたからこっちは抵抗しただけ。『殺してやる』とかも言っていたよね? これは正当防衛だよ」


 ユヅキの言い分はまったくもって正論だ。

 過剰な暴力行使を示唆されたのだから、やられる前にやり返したところで文句を言われる筋合いはないのである。

 ましてや相手は男性で、こちらは女性ばかりなのだ。

 当然の対応とも言えるだろう。

 ――もっとも、だからといって彼らが納得するとは限らないのだが。


「ふざっけんじゃねぇぞコラァ!!」


「治療費を出せや、オラ!!」


「そういや、そっちの嬢ちゃんは治療魔法を使えるじゃねぇか! さっさと治せや!!」


 激昂するチンピラたち。

 そんな彼らに、ローズは淡々と告げた。


「……あなたたちの要求を受け入れることはできませんわね」


「なっ……!?」


「なんでだよ!?」


 予想外の返答だったのか、驚きを見せるチンピラたち。

 そんな彼らに向け、ローズはさらに続ける。


「先ほどの件を覚えていないとでも? むしろなぜ、治療を受けられると思ったのか……。理解に苦しみますわね」


 ローズの指摘ももっともだ。

 つい先ほど、ヒナタの火妖術によって大やけどを負った彼らを、ローズは治療してあげた。

 にもかかわらず、彼らはミナを人質に取って強引なナンパを続けてきたのである。

 そんな彼らに再度の治療を行うほど、ローズたちはお人好しではないということだ。


「ぐぬぅ……!」


 悔しげに呻くチンピラたち

 しかし、そんな彼らに救いの手が差し伸べられた。


「……えっと。待ってください」


 それは、今まで静観していたエメラダが発した言葉だった。

 彼女はチンピラたちを見据えながら言葉を続けようとするのだった。

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