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619話 レディ

 ユヅキたちがチンピラに絡まれている。

 チンピラは小柄なミナを人質にとり、ネリスたちを脅してきた。


「さぁ、大人しくしろ!」


 そう言って、男たちが近づいてくる。

 彼らは全員武器を所持しており、明らかに戦闘慣れした者たちだ。

 おそらくは中級冒険者だろう。


 冒険者というのは自由業だ。

 依頼によっては魔物討伐や盗賊退治などの荒事もこなすし、ダンジョン探索なども仕事に含まれる。

 当然、危険を伴う仕事だし、失敗すれば死ぬかもしれない。

 そんな仕事をしているのだから、ある程度の戦闘能力を有しているのは当然のことだと言えるだろう。

 そして戦闘能力を持った者というのは、得てして増長しがちなものだ。


「へへっ。俺はメイド女にしようかね」


「俺はそっちの高貴な嬢ちゃんにするぜ。まるで貴族みたいだぁ」


 口々にそんなことを言う男たち。

 彼らは剣を抜いた状態で『殺すぞ』と脅しているわけだが、本気で殺すつもりはない。

 若い少女ばかりの集団であれば、そうして強い言葉を使えば言うことを聞くと思っているのだろう。


 実際、彼らはそうやって生きてきたに違いない。

 ブラック寄りのグレーゾーン――ギリギリのバランスで冒険者ギルドや衛兵の取り締まりを逃れているのだ。

 だが、今回は相手が悪かった。

 残念ながらこの場にいる彼女たちは、ただの少女ではないのだ。


「……のです」


「はぁ? 何か言ったか? 人質のガキ?」


「……ガキガキって、うるさいのです!!」


 突然大声を出したミナに驚き、目を丸くする男たち。

 そんな彼らに構わず、彼女は続けた。


「さっきから黙っていれば好き勝手言いやがるのです! ボクだって、立派なレディなのです!!」


 力強く叫ぶミナ。

 怒るところが違う気もするが、彼女なりにカチンとくるところがあったのだろう。

 そんな彼女の迫力に、チンピラたちは一瞬だけ怯む様子を見せたが、すぐに馬鹿にするような表情に戻った。


「おいおい! どこがレディだ! どう見ても子どもじゃねぇか!」


「ひゃははは! こりゃ傑作だぜ!」


 ゲラゲラと笑うチンピラたち。

 ミナはドワーフ族だ。

 幼い年齢に見えるが、実際には成人である10代後半だ。

 さらに言えば、種族的に小柄とはいえ胸部はそれなりに発達している。

 この点で、純粋な人族の幼女とは違う。

 だが、異種族に対して理解の浅いチンピラたちは、そのことを正しく理解できていないようだ。


「むぅ……ボクは大人なのに……!」


「はいはい、そうですねー」


「ぎゃははは! こいつは面白ぇや!!」


 ミナの反応を見て笑うチンピラたち。

 だが、彼らはふと違和感に気づいた。

 仲間の中で一人だけ、笑い声を上げずに静かな者がいるのだ。

 それは、ミナを人質に取っている者である。

 不審に思った仲間たちは、彼に話し掛ける。

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