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618話 ネリス

「よし! 決めたぜ! そこのメイド女にしよう! こんなチビガキよりもよほど良さそうだぜ!!」


 そう言いながら、男はネリスの方に視線を向ける。

 そしてニヤニヤと笑った。


「おいおい……なんだそりゃ? お前、メイド趣味だったのかよ!」


「ぎゃははは! 確かに笑えるぜ! ま、確かにチビガキよりは良さそうだけどよ!」


 仲間から馬鹿にされてもなお、男はヘラヘラ笑っている。

 そんな男に嫌悪感を覚えつつ、ネリスが尋ねた。


「……一応聞いておきますけど、あたくしのことを指しているのでしょうか?」


「当たり前だろ? 安心しな、たっぷりと可愛がってやるからよぉ」


 下卑た笑いを浮かべ、そんなことを宣う男。

 その表情からは罪悪感など微塵も感じられなかった。


(ふん……。小悪党が……)


 心の中で呟きながら、ネリスはスッと目を細める。

 彼女は元『毒蛇団』の幹部だ。

 別に清廉潔白というわけではないし、むしろ幹部の中では一番黒い部分を持っていたと言っていいだろう。

 もちろん非合法な手段を用いたこともあるし、時には命を奪うことも厭わなかった。

 しかし、そんな過去があるからこそ、目の前の小悪党に対しては強い不快感を覚えるのだった。


「あらあら、あなたのようなゴミクズに抱かれるなんて御免ですわね。せめて顔だけでもマシなら考えたかもしれませんが……」


「あ゛ぁ!? なんだとコラァ!! このチビガキがどうなってもいいのか!?」


 激昂するチンピラのリーダー。

 そんな彼に対し、ネリスは鼻で笑った。


「あら、もしかして本当に分からないんですの? おバカさんですこと」


「なっ!? この女ぁ……!」


 怒りに顔を赤く染めるチンピラたち。

 そんな彼らに向かって、ネリスが言い放つ。


「あなた、自分の状況が分かっていますの?」


「はぁ? 何を言ってやがるんだ!?」


「ほら、人質にされているその子ですわ。その子があなたの腕をしっかりと掴んでいるのが見えませんの?」


「……あぁ?」


 言われて初めて気づいたらしい。

 男は、自分の腕がミナに掴まれていることに気づいた。

 しかし、だから何だと言わんばかりだ。


「……それがどうしたってんだ? たかだかガキ一匹の力で何ができるってんだよ?」


「やれやれ……何も分かっていないようですわね……」


 呆れたように首を振るネリス。

 そんな彼女の様子にイラついたのか、男は彼女を怒鳴りつけた。


「いいからさっさと俺たちに付き合え! 抵抗するなら、このチビガキともども痛い目にあってもらうぞ!!」


「まぁ、怖い。では、そろそろ終わりにしましょうか。ねぇ? ミナ様?」


 ネリスは怪しい笑みとともに、ミナに声をかけたのだった。

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