613話 シルヴィとグレイスの実力
コウタとセリアを除く『悠久の風』は、ギルド併設のテーブルエリアで待機していた。
だが、そこに突然現れた3人のチンピラが絡んできたのだ。
当初はナンパ目的だった彼らだが、ユヅキに一蹴され激昂したらしい。
今、彼らはそれぞれ拳を構えて臨戦態勢に入っていた。
「おいおい嬢ちゃんよォ? あんまり調子に乗ってっと痛い目見るぜぇ?」
そう言いながら凄んでみせる男たちだったが、対するユヅキの態度は変わらない。
それどころか、さらに呆れたような表情すら浮かべているくらいだ。
「だからさ……。もうやめておきなって。僕が言葉で言っている内がチャンスなんだよ?」
「黙れぇぇぇ!!」
ついに堪忍袋の緒が切れたのか、一人が殴りかかってきた。
それを見た仲間たちも続くように動き出す。
「死ねやぁ!!」
「オラァッ!!」
左右から挟み込むように同時に襲いかかってくる二人。
それに対して、ユヅキは一歩も動かなかった。
いや、正確に言えば動く必要がなかったと言うべきか。
「【絶対零度】」
シルヴィがそう唱えた瞬間、迫り来る3人の足元が凍り付いたのだ。
「――なっ!?」
急に足が動かなくなったことで、その場から動けなくなる男たち。
何が起こったのか分からず目を白黒させる。
すると、そんな彼らの目の前に一人の少女が現れた。
「俺たちにケンカを売るなんて、命知らずだなぁ」
そう言うのはグレイスだ。
彼女は腰に差していた剣を鞘から引き抜くと、それを軽く振るった。
ヒュッ!
鋭い音とともに放たれた斬撃。
それは的確に――
「「ひいぃっ!?」」
男たちの顔面を襲った。
しかしもちろん、頭部を両断して惨殺するつもりなどグレイスにはない。
彼女の剣が斬ったのは、男たちの無精ヒゲだけだった。
だがそれでも十分すぎるほどの恐怖を与えたようで、男たちは情けなく悲鳴を上げるとガクガクと震え始めた。
「あ、ああぁ……っ!!」
情けない声を上げる男たち。
シルヴィの氷魔法とグレイスの斬撃を目の当たりにし、すでに戦意喪失しているようだ。
そんな彼らを前に、彼女たちが冷たい視線を向ける。
「ふん、ザコが」
「全くだぜ。それでよくイキれたもんだ」
断っておくが、シルヴィもグレイスも、基本的には優しい。
自分たちの敵対者には容赦しないというだけの話であって、性根に善良なのだ。
ちなみに今回は冒険者崩れのチンピラだったので殺さずに対処したが、これがガチの盗賊であればあっさりと殺していた可能性もある。




