611話 待機組
コウタがギルマスと面会し、セリアが受付嬢タニアとマウント合戦を繰り広げている頃――
残りのメンバーは、ギルドに併設されているテーブル席で待機していた。
そんな中、グレイスが声を上げる。
「コウタ親分、ちょっと遅くないか?」
「……そうだね。でも、なにせギルマスとの面談だからね……」
「へへっ。きっといい話があって時間がかかってんだろ」
「そうだといいけどね。妙に長い気はするよ」
ティータやリンの言葉を受け、ユヅキが不安そうな表情を浮かべる。
実際のところ、ティータとリンの考えは合っているし、それと同時にユヅキの懸念も的中していた。
コウタは、ギルマスから『試験』を仕掛けられて戦っているのだ。
しかし、コウタのことを信頼でしている彼女たちは、面談中のところに割り込むような真似はしない。
「あたくしにできることは、エウロス様を信じることだけですわ」
「男爵様は最強だから大丈夫だと思います」
ネリスとチセがそう言う。
『悠久の風』の面々は、コウタに好意や信頼を寄せている。
だがその中でも、初期組と新参組では少しだけ方向性が異なる。
シルヴィ、ユヅキ、ミナ、リンといった古参のメンバーたちは、実体験としてコウタの強さを知っている。
彼が『初級冒険者の割には強くて成長が早い』程度の実力であった頃から行動を共にしてきたからだ。
一方、ミルキー、ルン、ネリス、チセ、ヒナタといった比較的最近加入した面々は、コウタの強さの全貌を把握できていない。
盗賊団や魔物をあっさりと倒したところを見たことはあるが、具体的にどのくらい強いのかを実感していないのである。
そのため、どうしても過大評価してしまう傾向があった。
特にチセやヒナタなどは、コウタのことを世界最強だと信じて疑わないほどだ。
「コウタ坊はAランクだもんなぁ……」
「す、すごいですよねぇ。ワタシが料理人として働いているときにも、Aランク冒険者の方とは会ったことがありませんでしたぁ」
ミルキーとルンが呟く。
コウタは今回、正式にAランク冒険者となった。
冒険者としてかなり上澄みにいる存在だと言えるだろう。
とは言え、上には上がいる。
Aランクの中で比較した際に上位に位置する者、世界的に見ても数少ないSランク冒険者、あるいは各国の魔導師団長や騎士団長など、そのレベルになるとまた一回り違った強さを持っていると言っていい。
また、かつてコウタと一戦を交えた『黄昏の月』の『ナンバーズ』という強者も存在している。
まぁ、そこらの街単位で見ればコウタが最強だし、国家単位で見ても有数であることは確かだが……。
そんな感じで、彼女たちがコウタの強さに思いを馳せていると――
「へへっ。お嬢ちゃんたち、暇してんかい?」
不意に声がかけられたのだった。




