605話 強情
コウタがギルマスと面談中に、セリアは王都冒険者ギルド受付嬢のタニアからマウントを取られていた。
「ねぇ、セリアちゃん」
「なんですにゃ?」
「そんな男、捨てちゃいなさいよ。もっといい男を私が紹介してあげる」
「あ、いや、あのぉ……」
「なぁに?」
「えっとですにゃあ……」
どう答えたものか迷いながら、セリアは視線を彷徨わせる。
彼女はシルヴィやユヅキたちに助けを求めようとしたのだが、あいにく2人とも何やら別のトラブルに巻き込まれているようだ。
(うぅ……困りましたにゃぁ……)
ここで変に拒否すると角が立ちそうだ。
かといって受け入れるつもりもない。
「セリアちゃん、そんなに悩むことないわよ。なんなら、今夜にでもセッティングするわよ?」
「い、いえいえ! お気遣いなく!」
「遠慮しないでいいのよ。こう見えても顔が広いんだから! そこそこ程度の商人なら、何人か知っているわ」
「いやいや! そんなつもりじゃ……!」
セリアが必死に抵抗する。
しかしタニアはそれを意に介さない様子で話を進めてきた。
もはや完全に暴走状態のようだ。
(うぅぅ……! どうしたら良いのですにゃ!?)
タニアの勢いに押され、セリアは内心で頭を抱える。
王都で商人と結婚でもしたら、コウタ率いる『悠久の風』を脱退することになる。
今の素晴らしい稼ぎや効率の良いジョブレベリング、それにコウタからの寵愛を失うというのは絶対に避けたかった。
「ずいぶんと頑固ね。……セリアちゃん、昔はそんなに強情な子じゃなかったと思うけど?」
「……」
そう言われてしまうと返す言葉がない。
彼女は冒険者ギルド受付嬢のキャリア採用組として、きちんと自分というものを持っているタイプだ。
しかし、極端に頑固な性格というわけではない。
むしろ柔軟性のある方だと言えるだろう。
にもかかわらず、今回に限っては頑なな態度を取っていた。
その理由は――やはりコウタがそれだけ特別だということだ。
「わ、私は恋人一筋ですにゃっ!!」
「……はぁ?」
大声で宣言するセリアに対し、タニアは胡乱げな視線を向ける。
まるで理解できないものを見るような目だった。
「セリアちゃんが恋人一筋でも、相手は他にも恋人がたくさんいるのでしょう? ――ああ、そういうこと」
そこで何かに気付いたように声を上げる。
そして、ニヤニヤとした笑みを浮かべ始めた。
「なるほどねぇ……」
「何が言いたいんですにゃ……?」
「セリアちゃんを一番大切にしてくれているってことね。確かにそれなら、納得はできるわ。格下の女の前で恋人の寵愛を独り占めするのは、さずかし気持ち良さそうね?」
タニアがそんなことを言い出す。




