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602話 哀れみの視線

「『セリア』っていう見覚えのある名前は目に入っていたんだけど……。本当にあなただとは思っていなかったわ! 」


 セリアという名前は、激レアというほどではないが、決してありふれた名前ではない。

 自分の知り合いである受付嬢と同じ名前の冒険者がいたとしても、同一人物とはなかなか結びつかないだろう。


「こっちこそ、タニアちゃんが王都ギルド働いているとは知らなかったですにゃ」


「ま、私の実力なら当然の栄転よ。……ところで、セリアちゃんは冒険者に転職したのかしら?」


「そうですにゃ。いろいろあったのですにゃ」


「ふぅん。なんだか、大変そうね」


 タニアが同情するような表情になる。

 彼女が知っている限り、元同僚はとても優秀だったのだ。

 それが今や冒険者として”落ちぶれて”しまっているらしい。


(何があったのかしら……?)


 疑問を覚えると同時に、好奇心も湧いてくる。

 かつての受付嬢研修時代には、しのぎを削ったライバルであるセリア。

 そんな彼女が、どうして危険な冒険者にならざるを得なかったのか。

 タニアの価値観からすれば、それは転落劇の一種に思えた。


 他人の不幸は蜜の味。

 彼女は、セリアの不幸な境遇を知りたいと思った。


「セリアちゃんは、良い人に恵まれなかったのね?」


「……どういうことですにゃ?」


「どんな事情があったのかは知らないけれど、どうせ経済的な事情でしょう? 良い男を捕まえて、さっさと結婚しちゃえば良かったのに」


 タニアが小馬鹿にしたように言う。

 この世界には、ジョブや魔法が存在する。

 そのため、戦闘能力などの面において、コウタのいた地球ほどの男女差はない。

 しかしそうは言っても、妊娠機能を持つのが女性だけという点は同じである。

 結局のところ、強くて賢くて稼げる男をゲットして、安定した結婚生活を送るというのが女性の理想的な人生設計であった。


「良い男……かどうかはともかく、恋人はできたのですにゃ」


「へぇ……。やるじゃない! 結婚はまだなの?」


「まだですにゃ。彼には他にも恋人がたくさんいるのですにゃ」


「……なにそれ? 遊ばれているんじゃないの?」


 タニアが眉を顰める。

 彼女にとって、恋人が複数いるのはありえないことだった。

 女性をたくさん囲むということは、その分1人あたりの妻やその子どもに掛けるお金が少なくなるということでもあるからだ。

 もし自分がそんな状況に陥ったらと思うとゾッとする。

 彼女はセリアに、哀れみの視線を向けるのだった。

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