601話 エリート受付嬢タニア
時は少しだけ遡る。
コウタがギルマスと面談を始めた頃、シルヴィたちは――。
「うーん……暇ですね」
「そうだねぇ」
「……ん。ティータもすることがない……」
「挨拶をしようにも、ここに貴族の方はおられませんわ」
「退屈にゃぁ~」
――退屈そうにギルド内の椅子に座っていた。
特にやることもないのである。
ギルド内は酒場が併設されているものの、まだ夕方前ということもあってか営業していなかった。
そんな彼女たちのもとに、受付嬢がやって来る。
コウタをギルマスの部屋に案内し終えた女性である。
彼女はシルヴィたちに会釈すると、口を開いた。
「皆様、お待たせしております。よろしければ、お茶でもいかがでしょうか?」
「ボクはもらうのです」
「へへっ。せっかくだし、あたいもいただくとするかね」
「俺も頼むぜ」
「……えっと。あたしも飲みます」
ミナ、リン、グレイス、エメラダ。
それに他の面々も全員がお茶を所望した。
受付嬢はニコリと微笑み頷くと、一度カウンターの奥に戻っていった。
それからすぐに戻ってくると、人数分のカップを載せたお盆を持って現れる。
「へぇ。美味いじゃねぇか!」
「ワタシのラビット亭でも出せる味ですぅ」
「良いお茶っ葉を使っているようですわね」
「香りも良いですね」
「あちっ。はわわ……ぼく、ヤケドしちゃったよぉ……」
ミルキー、ルン、ネリス、チセ、ヒナタも遠慮なくお茶を受け取って飲んでいく。
ギルド内に併設されているテーブルで、一同は思い思いにくつろいでいた。
お茶の味に舌鼓を打ちつつ、雑談に花を咲かせていく。
そして――
「私にもくださいですにゃ」
「はい、どうぞ。――って、あれ? よく見たら、セリアちゃんじゃない!」
「へ? そう言うあなたは……同期のタニアちゃんにゃ!」
セリアと受付嬢――タニアは面識があったようだ。
互いに見つめ合い、驚きの表情を見せている。
「えーっと……久しぶりですにゃ?」
「ええ、久しぶりね。……もう仕事上がりだから、ちょっとお話しましょうか」
タニアがそう言って、セリアの向かいに座る。
他の『悠久の風』の面々は少し離れたところに座っており、同じテーブルを囲んでいるのはタニアとセリアだけだ。
「ここで働いていたんですにゃぁ」
「うん、そうなの。地方ギルドから栄転したのよ」
タニアはそう言って胸を張る。
2人はかつて、冒険者ギルドの受付嬢として採用された。
それも、キャリア採用だ。
最初に一律で戦闘や事務を含む諸々の高度な研修を受け、その後に地方配属されるのである。
セリアが受付嬢ながらも『悠久の風』に加入した時点で高い戦闘能力を持っていたのは、そのあたりの事情も関係している。
実はエリートなのだ。
しかしそのエリート組の中でも、地方配属の後に王都ギルドに配属になるのはごく僅かだった。
冒険者ギルド受付嬢という括りで見た場合、タニアこそまさにエリート中のエリートなのである。




