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598話 特製の武器

「なんだ、この程度で音を上げるとはな」」


「あぎゃあああああぁぁぁぁっっっ!!!!」


 悲鳴を上げ続けるギルマスだが、それでもなお俺の手を離そうとはしない。

 これでは、俺が手を離したとしてもまだ自由にはならないだろう。


「終わりだ!」


「くたばれぇぇぇっっっ!!!」


 盗賊たちが次々と襲いかかってくる。

 だが、その動きは大して速くない。

 そこらの高ランク冒険者なら、ギルマスに手間取っている間に攻撃を受けることもあっただろうが……。

 俺には通じない。


「ははっ! そらよっ! 特製の武器だぜ!!」


 俺は右手で掴んでいるギルマスを振り回し始めた。

 いわゆるジャイアントスイングというヤツだな。


「ぎゃあああっ!」


「ごふぅっ!!」


「ぐああああぁ!!!」


 豪快に振り回されたギルマスは、周囲の敵を薙ぎ倒していく。

 やがて勢いが止まった時、すでに立っている敵は一人もいなかった。

 当然の結果である。


「ふぅ……片付いたか」


 俺は一息つくと、右手の握力を緩めた。

 もう大丈夫だろうと思ったのだが……。


「……ん?」


 何やら、まだ若干の力を感じる。

 おかしいと思い手元を見てみれば――なんと、ギルマスはまだ気絶していなかったのだ。


「ぐ……はぁ……ぁ……」


 息はあるようだが、かなり辛そうだ。

 まぁ、俺の右手を拘束するために全力を出したあとに、それ以上の力で握り返され、さらにはジャイアントスイングをされてしまったのだ。

 元高ランク冒険者とはいえ、第一線を引いた彼には耐え難い苦痛だったのだろう。


「離せ、クソジジィ」


「うぐっ……!」


 俺はギルマスを蹴り飛ばし、手の拘束を解除させた。

 すると彼は力なく床に倒れ伏した。


(さて、これからどうするかな?)


 このままギルドマスターたちを放置するのはまずいかもしれない。

 いや、まず間違いなく騒ぎになるはずだ。

 それに、盗賊どもも捕らえる必要があるだろう。


「ま、待ってくれ。いや、待ってください。エウロス男爵」


「なんだ? 今さら命乞いか?」


 俺はギロリと睨みつける。

 ギルマスの口調が丁寧なものに戻っている。

 俺には勝てないと諦めたのだろうか。

 だが、彼の表情はどこか晴れやかなものだった。


「ご、合格です……」


「はぁ?」


「これは試験だったのです。ウルゴ陛下からご指示で……」


「なんだと……?」


 ただの言い訳かとも思ったのだが、国王の名前まで出されては無視するわけにもいかない。

 詳しく話を聞く必要があるようだ。

 俺はギルマスに向き直り話の続きを促したのだった。

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