384話 掃除
「ひっく……。ひっく……」
赤狐族の少女が盛大に漏らしてしまった。
その手は、意味なくドアノブを掴んだままだ。
「ははは! おもらししたのかよ!」
「情けねぇな!」
「ひゃーははは!」
男たちが少女を嘲笑する。
「ぐすっ……。ひぐっ……」
少女の目からは、止めどない涙が溢れていた。
「さあ、約束通り床を掃除してもらおうか」
「自分で汚したんだ。綺麗にするんだぞ」
「ううっ。ひっく……」
少女は泣きながらも、素直に従う素振りを見せる。
だが……。
「あの……。すみません、掃除道具を貸してください……」
「はあ? お前ふざけてんのか?」
「奴隷風情が俺たちの道具を借りようってか?」
「自分の体を使え」
「ひっ……。でも……」
少女が怯えた様子で言う。
「でもじゃねえんだよ! このクソガキ!」
男が少女の顔を殴った。
「あぐぅっ!?」
少女が小さく悲鳴を上げる。
男はそんな彼女の首を掴み、床へ向けさせた。
「ほれ。掃除しろ。自分の口を使ってな」
「ううっ……」
少女が涙を流す。
男は、汚れを舐めて綺麗にしろと言っているのだ。
「ううっ。うううっ……」
「早くやらないと、もっとひどい目に遭わせるぜ?」
「ひっ……」
少女の顔が恐怖に染まる。
肉体的な苦痛を受けるか、それとも汚物を口にするか。
どちらにせよ、地獄のような未来が待っている。
そこに、一筋の希望の光が差し込んだ。
「まあまあ。そのへんにしたらどうだ?」
「ん? なんだ? 邪魔をする気か?」
「いいや。俺はただ、こんなプレイにはさすがについていけねぇと思っただけだ。ほら見ろ、顔をしかめている奴らも多いぜ?」
男が周りを見回す。
すると、確かに他の男たちはドン引きしているようだった。
そりゃそうだ。
少女を辱めたり痛めつけたりするのは楽しくとも、部屋の中に汚物を撒き散らされ、それを舐め取るプレイを眺めるのはさすがに上級者すぎる。
「ちっ。仕方がないか……。おい、やめてやるよ。感謝しな!」
「げほっ! ごほっ!」
少女の首から手が離され、彼女が激しく咳込む。
「さてと。それじゃあ、掃除しておくか。【ウォータボール】」
男は水球を自在に操り、床の汚物を流していく。
「これでよしっと」
「ふう……」
少女が安堵のため息をつく。
「まだ終わりじゃねぇぜ?」
「えっ?」
男の言葉に、少女が驚きの声を上げた。
「俺たちの楽しみはまだまだこれからだ!」
「ひいぃっ! や、やだよぉ……」
少女が恐怖で震え出す。
そんな彼女を、男たちが取り囲む。
「い、いやああぁっ!!」
少女の無力な悲鳴が『毒蛇団』のアジトに響いたのだった。




