233話 ナンバーズ
『黄昏の月』のリリアナとザードは撤退した。
俺たちは残された黒狼団の面々を縛り上げ、アルフヘイムへと戻る。
そして俺たちは、ピュセル、ヤナハ、エルドレッド、村長たちと合流した。
彼女たちにも事情を説明する。
「そうか。我らが避難させてもらった後に、そのようなことが……」
ピュセルは言った。
「しかし、まさか『黄昏の月』のメンバーまで絡んでいるとは思わなんだ」
「俺もです。まったく予想外だった」
村長の言葉に、エルドレッドが答える。
「何か知っているのか? 二人とも」
俺はそう問う。
それに対して、村長が口を開く。
「ああ。『黄昏の月』というのは、世界的に活動している闇の組織じゃ。メンバーの一人ひとりがずば抜けた戦闘能力を持っていると聞く」
「闇の組織、か」
それは初耳だ。
MSCにはそのような組織やイベントはなかったように思うが。
「特にナンバーズと呼ばれる幹部メンバーは、『白銀の翼』『赤銅の刃』『漆黒の爪痕』など、各国で有名な冒険者パーティーを壊滅させたこともあるらしい。一度相対すれば、生きて帰れるかどうか分からないとか」
「ほう」
俺は興味を持った。
どうやら、ただの無法者の集まりではないようだ。
「確かに、ナンバーズとか名乗っている奴がいたな」
「なにっ!? ナンバーズが来ていたのか!?」
村長が驚いた顔をする。
「ああ。確か、リリアナと名乗っていた」
「リリアナ……だと!?」
「知っているのか?」
俺は聞いた。
「ああ。表舞台に出ないナンバーズの中で、数少ない名前が伝わっている人物の一人じゃ」
「そうなのか」
「土魔法においてその実力はナンバー1と言われている。だが、実際に戦っている姿を見た者は少ない。大抵は歯が立たず一方的に殺されるからな。運良く生き残った者も、怯えてまともに会話ができない状態になっているとか」
「へえー」
あのリリアナって奴、そんなに強いのか。
「ちなみに、コウタ殿はどうやって逃げたのです?」
「ん? 俺は逃げてなどいないな。正面から戦っただけだ」
「……なんと」
「まあ、相当苦戦したがな。最後は、時間がどうとかで、向こうが勝手に撤退していったんだ」
あのまま戦っていれば、どうなっただろう?
英雄のスキル【アクセル】を全力で使用すれば、当然勝てる。
だがその場合は、仲間や周囲の地形に被害が出てしまう。
適度に加減して戦いたいところだが、それで勝てるほどあのリリアナは甘い相手ではなかった。
「そ、そうですか……」
「コウタなら、リリアナとだって互角以上に戦えると思うよ」
ユヅキが言う。
「ああ。だが、みんなをしっかり守るためにも、もっと強くならないとな」
「そうですね。わたしも強くなります。ご主人様の足を引っ張らないように」
シルヴィが真剣な顔で言った。
その後、村長やエルドレッドに後処理を任せて、俺たち『悠久の風』は休むことにしたのだった。




