旅立ち
「お兄ちゃんも、グラディウスさんも気を付けてね」
「わかってる」
「行ってくるよ~」
家族や知人たちに見送られながら、小生は人間に変身したグラディウスを背に乗せた。
「いつでも準備はいいよ~」
「いくよ!」
小生は背中に4枚の翼を具現化した。
「しっかり掴まっててね」
「わかった~」
どうやら今日のユニコーン渓谷の機嫌は良いようだ。
機嫌が斜めだと4枚羽でも不安定になることがあり、険悪な日になると6枚羽(通称:熾天使の天馬)でも飛行不能になるのだから大変である。
無事に難所である渓谷を越えると、小生たちは森へと着地した。
「本当にカッツは凄いよ~! 僕だけだとここを越えるのに2日くらいはかかっただろうね」
「伊達に翼を生やしている訳じゃないからね」
そうは答えたものの、やはり異性から褒められるのは嬉しいものだ。地道にポイントを集めて良かったと思う。
「少し仮眠をとったら、目的地に向かうよ」
「もう場所に目星は付けているのか~い?」
「うん、南東5キロメートルくらい先に最近できたばかりの村があるんだ」
その話をきいたグラディウスは不安そうな顔をした。
「それ~、ユニコーン渓谷に近くない?」
「大丈夫だよ。夜だから解かり辛かったと思うけど、渓谷からここまででも25キロメートルは離れているから」
グラディウスは苦笑した。
「そ、それだけ離れているのなら……安心だね~」
小生たちは休憩しながら旅の携帯品を確認した。
年季の入ったマントに、古びた鍋、水筒用のひょうたん、携帯ナイフ、火打石。
そして何といっても蜂と言えば、良い香りのする花、重箱と呼ばれる巣箱、蜜蝋の入ったひょうたんである。
「ねえ、この花は?」
「ああ、これはハニービーを呼び寄せる花で~、飾っておくと女王バチを呼んでくれるんだ~」
「もしかして、老師が持ち帰って種から育てたっていう、フトモモピープル共和国の花?」
「あ~、よくわかったね。そうだよ~。黄金境シッポンの隣にあるおっきな国の花さ~」
とりあえず忘れ物もなく、準備は万全という様子である。
3時間ほど仮眠をとると、朝日が昇る前に小生たちは起きて軽食を取った。
「そろそろ行く~?」
「うん、小生は荷馬、君は飼い主という形で頼むよ」
「わかった~」
喋る荷馬としてふるまうのか、あくまで会話はテレパシーになるのかは、現地に行ってから決めることにした。
さて、養蜂農家に扮して美味しくレベルアップ作戦……果たしてうまく行くだろうか。
【カッツバルゲルの妹スティレットからのお願い?】
ええと、このウーマシア大陸は私たち馬を横から見たような形をしていて……
頭と角の部分が、私たちの住むツーノッパ地方。
北東のタテガミ地方が一番寒くて……
首回りには、全ての生きとし生ける者の神様が降り立った、聖域があって……
前脚の部分と、寝床の大陸の北側は砂漠に覆われてて……
お腹の部分には、オムネスタン諸国と、象の大国があって……
極東部に行くと、太ももピープル共和国と、膝およびフクラハギ諸国連合……そして尻尾のシッポン。
うん、これで地理は大丈夫……多分だけど。
まあ、これで大丈夫でしょうと思った方は、☆☆☆☆☆を★★★★★に変えてあげてください。母ククリからもお願い申し上げます。
すでに変えて頂いた方は、しつこくなって申し訳ありません。