いやいや、円満追放です
「あ、カッツお兄ちゃん!」
着地と同時に声をかけてきたのは、妹のスティレットだった。
「スティレット……これは一体?」
小生が周囲で横倒しになっているワルガキ仔馬を眺めていると、彼女は言った。
「お母さんとお兄ちゃんのことをバカにしたから、ちょっとこらしめたの」
「……ちょっとどころじゃないでしょ、これは」
母親ククリは他の仔馬のお母さんたちに謝っていた。
「本当に、申し訳ありません」
「いいんだよ。子供ってのはちょっとくらいヤンチャな方がいいんだって」
「あんたたち、いつまで寝てるの!?」
母親たちに怒鳴られると、転がっていた仔馬たち起き上がってスティレットを睨んだ。
「よ、よくもやりやがったなブス!」
「灰色ゴリモリヒンバ。覚えとけ!」
「こら、女の子になんてこというの!」
母親たちが叫ぶと、ワルガキ仔馬たちは一斉に逃げ出した。
「全くもう」
「お帰り、カッツバルゲル君」
小生はやっと正常な思考に戻った。
「お久しぶりです」
「冒険の帰り? 今日は……」
母馬たちは再び、自分の仔馬に鋭い視線を向けた。
「あんたたち、今度は何やってるの!」
「もう……」
「カッツ君、今日はお母さんやスティレットちゃんとゆっくりね」
「は、はい……ありがとうございます」
母親ククリ、妹スティレット、小生の3頭だけになると、再びお互いを見合った。
「ただいま」
「お帰りなさいカッツバルゲル」
真っ白なユニコーンである母ククリは、笑顔で小生を出迎えてくれた。
妹も成長するとこういう姿になるのかな?
小生は翼を畳みながら言った。
「今回もたくさんポイントを取ってきたよ!」
「幾つ?」
妹が聞いてきたので、胸を張って答えた。
「388ポイント!」
「す、すご~~~~~い! たったの半年で去年のトップ記録を塗り替えたんじゃない!?」
そう言われてみれば、そうかもしれない。
「まあ小生は、効率重視だからね」
「効率重視……?」
ククリは目を丸々と開くと不安そうな顔をした。
「また何か揉め事を起こしたのですか?」
「いやいや円満追放だよ、魔法剣士御一行様はポケットシェルターを入手したから」
ククリはがっかりした様子で言った。
「また、荷物運びをしていたんですね」
「今どきの人間に角なんて見せたら襲われるから。はい、里とお母さんに38レベル分ずつね」
角でユニコーン文字を記して、レベルボーナスを里とククリに送ると、彼女は複雑な表情をした。
「貴方がたくさんポイントを稼いでくれるのは、私としても嬉しいのですが……」
「お母さんには元気な弟や妹を産んで欲しいからね。これからもガンガン稼いで来るよ」
「お父さんやおじいちゃんのように、高名な勇者の仲間となって魔族と戦って欲しいものです」
小生は沢の水を飲むと答えた。
「無理だよ。その命を懸ける価値のある戦士がどんどん減ってるし、そういう戦士ってのは最初からレベルが高いって相場は決まってるんだ。組んだところでレベルアップの恩恵には預かれない」
答えながらふと思った。
冒険者や傭兵だって訓練をしているのだから、素人を訓練した方がもっとレベルアップの恩恵に預かれるんじゃないだろうか。
「あ、もっといいこと思いついた」
ククリとスティレットは、お互いを見合った。
「一体、何をするつもりなんですか?」
「できたばかりの村があったから、そこに潜り込むんだ。で、何か別の仕事をしながら素人同然の若者を仕込めば、もっと効率よくレベルアップできる」
スティレットは、身を乗り出してきた。
「別の仕事ってどんなことをするの?」
「養蜂がいいかなって思うんだ」
妹は意外そうな顔をした。
「養蜂ってハチを飼う……あの養蜂?」
「うん」
スティレットだけでなく、ククリも不思議そうな顔をしていた。
「どうして? お兄ちゃんってヒールも上手じゃない」
「そうですよ。貴方たちの父コンドコソトレルやおじいちゃんも、治癒術の名手ですよ」
「ハチを操る能力は、人間たちから見て飴にも鞭にもなるから」
スティレットは、痺れると言いたそうに笑った。
「そのセリフ……私も言ってみたい!」
ククリも頷いた。
「ハチを操る能力はあるの?」
「ああ、去年にポイント変換しているよ」
「なるほど。それなら栗毛のバスタードさんに挨拶してきなさい」
【カッツバルゲルからのお願い】
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次回は、その頃の魔法戦士一行。お楽しみに♪