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幻惑の霧

 白昼夢の通り、オーガと手下たちは森の前へと姿を見せた。

 その数はオーガ1、トロル9、ビッグウルフ5、ホブゴブリン20、ゴブリン35、ヘルウルフ45。


「……戦力のほとんどをかき集めてきた感じだね」

「勝てるのー?」

 馬の姿のグラディウスは心配そうに言うと、小生は自分で発生させた霧を眺めながら言った。

「思ったよりも薄いな。まあ、今日は天気もいいから仕方ないか」


 

――霧が何だ。お前ら……あの馬ヤローにアビス魂を見せてやれ!

――ギョイハー!


 魔物たちは続々と森の中へと侵攻してきた。

 グラディウスは鼻を引くつかせた。

「ねえ、何だか狼のにおいがしない~?」

「敵にビッグウルフがいるからね。だけどまあ……見てて」


 気を集中すると、魔物の怒号が響き渡った。

「いたぞ!」

「敵だ!!」

 森の入り口付近から、金属をぶつけ合う音が聞こえてきた。どうやら上手くいったらしい。


「翼は……背中にあるし、伏兵を置いたわけでもないよね~」

 グラディウスの言う通り、小生の翼は4枚とも背中にしっかりとくっついているし、村人には守りを固めて貰っている。

「散布したのは幻惑の霧だよ。彼らは同士討ちをはじめたんだ」



 1分ほどでオーガの声が響いた。

「お、お前たち……何をしている、目の前にいるのは味方だぞ!?」

「な、なに!?」

「どうなってるんだ!」

「敵は向こうだ、行け!」

「シェエッヘー!」


 小生は後翼を1本だけ切り離した。

「さて、第2弾と行こうかな」

 間もなく小生の放った翼は、森の入り口付近で工作を行ったようだ。


「ごあ!? 誰だ!」

「あ、あんなところに翼が飛んでるぞ!」

「待て、あれはまやかしだ……このままぜんs……ごは!?」

 どうやら翼は、ホブゴブリンを1体倒したようだ。

「この足音は~……」

「どうやら、翼の挑発に乗ったみたいだね」


 そしてまた、魔物たちは誘導されて同士討ちをはじめた。

「この人間風情が!」

「くたばれ、この羽!」

「その頭、叩き割ってやる!」


「何度言ったらわかるんだ! 味方同士で争ってる場合じゃないぞ!!」


 そろそろ勝負時だろう。

「行け」

 背中に残っていた3枚の翼は、待ってましたと言わんばかりに飛び出した。


 そして20秒もすると、次々と魔物たちの悲鳴が響いてくる。

「ぐぎゃーーー!」

「ギャイン!」

「ボス、どうし……がへら!?」


「お、おのれーーーー!」

 ボスであるオーガは再び逃亡しようとしたが、翼3枚は一斉に攻撃を行った。


「ハゴブらヘブ!?」

 小生は迷わず言った。

「じゃあグラディウス、今回の敵は全部君がやっつけて。そうすればレベルが50以上になってユニコーンに進化できると思う」

「わかった~」


 間もなく、グラディウスが蹴りを入れる音と魔物の叫び声が森中に響き渡った。

【名もなきオーガからの挨拶】


 ぐは……遂に、馬にけられてやられちまった。

 ま、まあ、俺様の経験値が……ヒロインのレベルアップに繋がるのなら、それもいいか。


 ちなみに……俺様たちオーガは独立種族だから、ゴブリンとごっちゃにしないように頼むぜ。


 俺様の実力がわからなかった? ああ、まあそうだろうな。ゴブリンナイトと大体同じくらいだが、あいつらは数が少ないからな。俺様のような鬼が代役として隊長を務めることもあるんだよ。


 まあ、王国軍近衛隊主力クラス=オーガ=ゴブリンナイト……ってところか。


 つーか、俺様を部隊ごとぶっ潰してる、カッツバルゲルがヤバすぎるんだよ!

 アイツ……一体、どんなお馬さんなんだよ……トホホホホ……


 あ、【ブックマーク】と、☆☆☆☆☆→★★★★★をまだの人、見ていたら協力してやってくれ。

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