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辺境の農村で僕は魔法で遊ぶ【書籍版三巻と漫画版全二巻が只今発売中】  作者: よねちょ
第二部 僕は辺境の学校で魔法で遊ぶ 第一章 物語は辺境から辺境へ
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第一話 これまでと今とこれから 1

長い時間放置していたのに、書籍版や漫画版を買ったというありがたいコメントを頂きました。

言葉では伝えきれませんが本当にありがとうございました。

「だめだよアリーチェ、父さんにそんな態度しちゃ」


 僕が叱るとアリーチェはしょぼんとした顔になる、くっ心苦しい! でも、頑張って仕事をしてきた父さんに向かってしていい態度ではないからね。

 心を鬼にしないと、いや、鬼じゃ足らないかな閻魔様にでもなった勢いじゃないと叱りづらい。


「でも、おとうさん、きのうもありーちぇのおしごととったの」


 アリーチェの仕事といえば食事の後、自分のお皿洗いだ。また父さんが横から手を出したんだな。


「父さん! あれほど言ったのにちゃんとアリーチェがやるって言ったんだから、やらせてあげないと」

「だっ、だってよ。アリーチェの可愛いお手々が荒れでもしたらと思うと手を出したくなるだろ?」


 なる! ぶっちゃけなる。なるけれど僕だってアリーチェの成長のために見届けていたのに、父さんが手を出したらだめじゃないか。


「おにいちゃん、ありーちぇわるかった?」


 アリーチェはクリンとした目で首を傾げながら上目遣いで僕を見ていた。そんな技を一体どこで……。


「う……。と、父さんが悪いかなー」

「お、おい。ルカ」


 僕の擁護がなくなったからか父さんは焦った声を出す。その言葉でぼくはしょうきにもどった。


「……確かに父さんが一番悪いけど、僕はアリーチェのそんな顔を見たくないな。だから父さんが悪いことしたら僕と母さんに言うんだよ。アリーチェの代わりに僕達が父さんにメッってするから、アリーチェには笑顔でいてほしいな」

「……うん、おとうさんもごめんなさい」

「ほら父さんも謝って、アリーチェ悪くないのに先に謝ったんだよ?」

「すまんかった」


 うん、一応一件落着かな?

 解決したみたいだからいつものように勢いよくでも優しくアリーチェを抱えあげ、くるくる回る。


「よーし、ちゃんと謝れてえらいぞアリーチェ。さすがは僕の自慢の妹だ! かわいくてえらいぞ!!」

「ほんと? あーちぇ、にいたんのじまん? かわいい? えらい?」

「ああ、もちろん自慢だし、かわいいよ。ほーらスリスリもしちゃうぞ」

「にいたん、あーちぇもすりすりー」


 こうやって感情が高まるとまだ僕と自分の呼び名が昔に戻るけど、そこがまたかわいい。

 指摘すると「いってないもん」って、むくれちゃうからしない。むくれてる様もかわいいけどしない。


「おいおい、アリーチェ。またあー──いってぇ!」


 たぶん父さんは「またあーちぇって言ってるぞ」って言いたかったんだろうけど、その言葉はガンッという打撃音によって中断された。


「おかえりなさい。エドワード、ルカ」


 頭を抱える父さんの後ろから現れたのは、今スッと後ろ手にフライパンを隠した母のソニアだった。

 さすが夫婦なだけあって父さんが雑なこと言うのを止めるタイミングは完璧だった。


「ただいま、母さん」

「た、ただいま、ソニア」

「二人共、手を洗ってきてご飯の準備は出来てるわ」


 父さんも自分が失言しようとした事は分かっているのか、殴られても文句一つ言わなかった。

 これで僕の家族全員が揃った。……いや、あのこも家族になったからまだか。


 そんな事を考えていると、白い小さな塊が地面を這うように駆け抜けてきた。 

 完全な純白で汚れ一つない毛皮に覆われた靭やかな肉体、ふわふわで長い尻尾、そして肉食とは思えない愛くるしい顔。

 

 そう、それは猫だった。真っ白い猫が駆けてきた勢いそのまま、僕の体を駆け上り自分の位置だとばかりに少し自慢気にも見えるように僕の後頭部にふわふわのお腹を当てながら両肩に器用に立っていた。


 今、僕の体に爪を立てながら登ったこの子が僕達の新しい家族で妹だ。


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[一言] 人化はしませんように人化はしませんように人化はしませんように
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