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第十八話 神様の場所の魔法

 神父様がトリップして語りだしてしまって、それを見た教会にいるみんなが黙ってしまった所にまたもやアダンくんが大声を上げる。いいぞ、アダンくん


「わっかんねー、神父様。みんなごっちゃごちゃで何が違うのかわかんねー!」


 アダンくん、すごい。あの状態の人に真っ向から否定するようなことを言えるなんて。

 その台詞を聴いて神父様の表情が抜け落ちたように戻り、「なるほど」とつぶやいた。──こわい。


「良い質問ですね。アダンくん」

「だろ!!」


 アダンくんは神父様の空気も読めず、ただ得意気だ。


「なぜ違いが分かるかと言うと、神様の力が宿る場所が違うのです」

「場所って何処だ?」

「そうですね、今日は特別に皆さんにお教えしましょう。まずは頭頂部、頭の上にはですね──」



 そう言って神父様は、神様の宿る場所? というのを語りだした。

 頭頂部には創造の神様。額には契約の神様。胸の真ん中、心臓の横には生命の神様。喉には術の神様。おへその上には力の神様が宿っており、おへその下──丹田辺り──で魔力を練り、その魔力を使うとき宿った場所がわずかに活性化で分かるという、そして、魔力を練った場所に一番近い、力の魔法が一番使いやすいということだそうだ。

 

 アダンくんが「じゃあ、なんで一番遠いはずの生活魔法は使えるのか」と聞くと、「それこそが神の慈悲です」という答えが返ってきた。

 ここでやめないのが僕らのアダンくん「生命魔法は術魔法の下にあるから、術魔法より使いやすいのか?」と、さらに質問する。

 もう僕達は黙ってみてるしかない。


 神父様は少し引きつらせながら「教会に所属する者のみが使える契約魔法と生命魔法は、人体の重要な場所に存在する分、神の恩恵が強い場所なので誰にもというわけにはいかないのですよ」と少し早口になっていた。


 それにしても、神父様が言う神様が宿る場所、僕が赤ちゃんの頃チャクラを開いたと思った場所──中二病のことはもう吹っ切れた──と同じ場所だけど、魔力を溜める場所を含めても一箇所足らなくて六箇所しかないな。

 でも、前に魔力励起と魔力循環のことで恥をかいたから、僕が新しく見つけてるとかいう妄想は捨て去ろう。


 だから多分、神父様が言うことが正解なんだろう。と、いいかげんにしろと三度目のげんこつを食らうアダンくんを見ながらそう思った。


   ◇◇◇◇


 神父様のお話も一通り終わった。今日は魔法のことをいっぱい知れたなぁ。

 アリーチェはずっと眠ったままだった。あの雰囲気の中、この子は大物になるぞ。

 アリーチェの寝顔を見ながらぼーっとしてたら、両サイドから肘で突かれている。母さんとレナエルちゃんだ。


「どうしたの?二人共」

「どうしたのじゃなくて神父様がお呼びよ?」


 その言葉で顔上げてみると神父様が困った顔をしていた。


「すみません神父様。何か御用でしょうか?」

「いえ、いきなりですみません」


 そこで神父様が話を聞いていたみんなに向かって。


「先程魔術を使えるようになる方もいますよといったのは、ルカくんのことです。ルカくん申し訳ありませんが、皆さんのために少しだけ魔術を見せてもらってもいいですか?」


 まあ、別にいいけど。周りを見てみるとあんまり受け入れられてなくない? そりゃレナエルちゃん以外とじゃほとんど遊んでないから面識がないのは仕方ないけど。

 なんかいじめにあってて、教壇に呼び出されて注目を浴びるみたいな感じになってない?


 しぶしぶと神父様の隣に立った。えっと、前にレナエルちゃんに見せた殺陣で良いか大きく作って見せればまあまあ迫力あるだろうと、思って魔法を使おうと思ったら、神父様が肩に手を載せてきたのでビクリとした。


「あの?神父様?」

「お気になさらずに、ルカくんがちゃんと術の魔法が活性してるかを見るだけですよ」


 え?見ないでほしいんだけど。僕としては魔術として生活魔法を使って遊んでる感じだっただけど、実はそうじゃなくて創造魔法を使ってたりしてたらどうしようと思った。

 先程のヤバ気な神父様の様子から下手なことはできない。


「あの、神父様恥ずかしいので……あ、ほら。シスターも見てますよ!」


 話しながら体をよじって神父様の手から逃れようとしたけれどそこは大人と子供の体の差で無理だった。しかも何を思ったのかシスターまで近寄って反対の肩に手をおいた。


「え?シスターまで?」

「私もルカくんの魔力を見てあげますからね」


 あれ?大人二人に両肩を押さえられる子供が前に立ってみんなから見られてるって構図ほんとにいじめなんじゃ?

 ちらりと母さんやレナエルちゃんを見てみるけど母さんは喜んでるし、レナエルちゃんは少し羨ましそうに見ているってことは、魔力を見てもらうって良いことなのかな?今は良いことじゃないけど。


 いや本当は魔術使ってるはずだと、ちょっと試しに魔法を撃ってみた。いつもの感じで風魔法を発動させ、何も制御せず魔力も繋がないただの風だ。

 ふわりと神父様の髪が揺れる。少しだけしか魔力を込めてないからだ。


「良い神の息吹ですね。柔らかな生活魔法です」


 やっぱり、生活魔法だった!?


「風を起こすのもよろしいですが、風の生活魔法は呼吸困難な場所で使用する際がありますので、基本形態の丸や四角を使ってみるのもいいと思います。風魔法は目に見えないので水魔法でやってみますね」


 神父様は生活魔法を浴びて、なにかスイッチが入ったのか語りだした。他の人もキョトンしてる。


「ルカくんすみません。そこの水差しを取ってください」

「はい、これですね」


 お、完全に話がそれてきたぞ、と、神父様が話してるときに飲む用の水差しを取って渡した。


「では使ってみます」


 一瞬、綺麗な丸が出来たと思ったら、水の玉がゆらゆらと形を崩しながら揺れるように浮いていた。そして、用意していた水差しの中に落ちる。


「ふう、このように丸を作って、すぐに呼吸をしたら良いと思います。水魔法でしたのですぐに制御が切れてしまいましたが、風魔法ならもう少し持つことでしょう」

「神父様、基本形態ってなんですか?」


 よしよし、このまま話をずらしていこう。


「基本四種の生活魔法は何もしなければばらばらの塊として出ます。ただ神様がそれでは不便だと、あらかじめいくつか形を決めてくださったのです。それを基本形態といいます」

「なるほど、色々な形にできるんですね」


 話をずらしていったけどよく聞いてみると神父様も形も普通に変えれるし、制御して浮かせている。

 僕の生活魔法も少し頑張ったから神父様よりできるだけで大して変わんないじゃないか。

 これって魔術じゃなくて生活魔法を使っていただけだったって笑い話になるだけじゃないの?

 じゃあ、別に隠さなくても良いのか。焦って損したな。


 「あの神父様」と、笑い話にしようと話しかけようとしたら、

教会の扉が急に開いて、一人の村人が駆け込んできた。

 その後を村の子──だと思う──、子供があとからついてきて「俺んだぞー返せよー」と、言っていた。

 アダンくんが声をかけていたので友達なのだろう。


「し、神父様、村のハズレで遊んでいた子供がこんな物を見つけまして……」


 焦ったその人がもっていたのは占いで使うようなきれいな水晶球だった。

 ん?なにか見覚えがあるような?前世で見たからデジャブみたいなものかな?


「これは──一体これを何処で?」

「村の外れで子供達が空き地で遊んでいたら、茂みから出てきたそうです」


 神父様が何処かと問い出したのをこっそり聞くとと、僕がこの前誰も来ないと思って転げ回っていたところだ。

 そんな所にあんな物があったのか気付かなかったな。魔力使った途中から家につくまであんまり覚えてないんだよねぇ。


「神父様これがなにかわかりますか?」

「ただの水晶球のようにも見えますが何故こんな所に?」


 子供は「俺んだぞ」ってまだ言ってるけど、親に黙ってろと言われて膨れていた。


「シスターなにか知っていませんか?」

「少し拝借を──いえ、わかりませんね」


 あれ?シスターが持ったとき少し光ったような気がする。


「ともかく、その子には悪いですがこれは辺境伯様に渡さなければなりません」

「はい、それはもちろん」


 この土地は辺境伯様の物だから珍しいものとかはすべて渡さなければならない。

 取られるとわかった子供が、とうとう泣きそうになってる。その子供にシスターが近づいて口になにか入れたら、子供がびっくりした顔になって「甘い!」と言い出した。

 シスターがさらにもう一つ手に握らせて「これで許してくださいね」と言ったら子供の機嫌も直ったようだ。


 僕の魔法の披露も有耶無耶になって、解散になりかけたがまた見せてくれと言われるのもめんどくさいので、ササッと見せたら驚いてくれて、終わったらみんなから割れんばかりの拍手が降って来た。


 騒ぎもあったから神父様達は僕の魔力を探るのも忘れていたみたい。

 隠蔽は癖になるようにいつも使っているので、離れた場所じゃわからなかったようだ。

誤字脱字報告ありがとうございます。


いつも見てくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] これはやはり魔術ではなく創造魔法を使ってるっぽいね。 創造魔法という大カテゴリの中に生活魔法という小カテゴリがある。 となると辺境伯が派遣して家を建築した魔術士たちは材料を用意して組み立てる…
[一言] 魔法だから風呂に入れるんやね 魔術だったら入ってる途中で湯が無くなるって事やし
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