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9.ユーリア妃の病気

そうしてバージルに導かれ奥さんの寝ている部屋へとやってきた。


「コンコンッ。ユーリア入るよ。」


「「失礼いたします。」」


部屋に入ればふんわり香る甘い匂いに思わずうっとりしてしまう。

大きなベッドの上にユーリア妃は横になっていて、私たちが入っていくと額に汗を浮かべながら一生懸命起き上がろうとしていた。


「ユーリア!起き上がらなくていい!寝ているんだ。」


バージルはユーリア妃に寄り添う。

それだけをみて、あぁユーリア様のことを本当に大事にしているんだなぁと心が温かくなるのを感じた。

なんとしても助けてあげたい。私にできることであればやって見せる!

そう息巻いて、レイラはユーリア妃に近づいた。


「ユーリア様、私は魔道錬金術師のレイラです。記憶はありませんがあなたを助けたいと思い来ました。お身体を診ても宜しいですか?」


「初めまして。私はユーリアと申します。私の為にご足労頂きありがとうございます。よくハルトからお話は聞きました。お話の通りとっても可愛い猫さんだこと・・・。私の身体はもうほとんど動きません。希望は捨てました。ですが・・・あなたなら診て頂いて大丈夫ですよ。」


第一印象はとても綺麗な人だなと思った。

こんな記憶もないただの小娘にこうやって優しく話しかけてくれ、一番つらいだろうに常に笑顔だ。


私は、「では身体を診させて頂きます。」と言い、布団をめくった。


可愛いネグリジェに包まれた大人の魅力満々の身体は女の私でも見とれてしまう。透き通る白い肌に豊満は胸。足の指先を見ると話しにあったように小さな傷跡があった。傷跡も見て相当辛かったのだろうと胸を締め付けられた。


「失礼いたします。」


症状が出始めた足の指先から自分の手で触れていく。


(うん。ちゃんと血液は通っている。温かさもある。毎日しっかりとマッサージをしているのだろう。)


部分的に確認しながら「痛くないですか?」と声をかけていく。

その度にユーリア妃は「大丈夫よ」と笑顔で答えてくれる。


(どうしてこんなに優しい人が、こんな目に・・・)


心の中で思っても何も変えられない。

暫く見た後に痺れの原因が足の先ではなくお腹の辺りから発生していることがわかった。


(うん。話を聞いて思ったけど、やはりそうね・・・)


レイラの中でひとつの想像が確信に変わる。


「原因がわかりました。」


「何!?」


こんなことをするなんて最低だ・・・。私は怒りを抑えるために手を強く握り占めた。

どれだけそうしていたか私にはわからないが、「レイラ!」 とハルトが私を呼ぶ声に「はっ」とした。


強く握りしめた手からは血がにじんでおり、ハルトによって手を握られていた。。


「大丈夫ですか?とりあえずヒールします。」


「ご・・・ごめんなさいっ。こんなことをするなんて・・・怒りを抑えることが出来ませんでした。」


ハルトは私の手を優しくなでながら「ヒール」を唱えてくれた。

しばらくの沈黙の後、私はゆっくりと少し震えながら口を開いた。


「これは、一言でいうなら麻痺です。」


「麻痺?」


「・・・はい。非常に言いにくいですが、身内に犯人はいると思われます。」


私は下を向きながら服の袖をつかんだ。


「それが本当なら国家反逆だぞ!」バージルが声を荒げる。


「原因はおそらく『ハッチャーマヒ』というハチのような形をした虫から取れる毒です。ハチのような見た目なので普段見かけてもハチとあまり大差はありませんし、普通に刺されます。ハッチャーマヒの体液を抽出し飲み物や食べ物に混ぜることにより、毒になり摂取することで一時的に手足が痺れたりしますが軽い毒なので一時間も経てばすぐ直ります。ですので、比較的に毒要素は少ないんですよ。ただ・・・」


「ただ・・・なんだ?」


「ただ・・・毎日その毒を服用した場合、毒が蓄積しユーリア様の状態になることがあります。つまり・・・」


「身内に犯人がいると言ったのはその為か。」


「はい。一度の摂取でここまでの症状を出すのはどうしたって不可能です・・・。毎日毎日欠かさず毒を与えることがここまでの症状を出す最低条件です。毎日欠かさず飲んでいるものや食べているものはありませんか?」


私は自分で言いながら少し震えていたのだろう。ハルトは私の手を握り占めてくれていた。


「え、えぇ。そうね・・・。このお医者様から頂いた薬と飲み薬、後はいつも頂いているお食事を食べているわ。」


「診せて頂いても?」


大丈夫よと言ってユーリア妃はいつも飲んでいる薬を手渡してくれた。

一つ一つ袋わけをされている粉薬であり、一つ破って匂いを確認した後粉を舐めてみる。


「うん、癒します草とマヒ種をすりつぶして粉上にしたものですね・・・。これに対して毒はないです・・・。ん~」


「君は薬を舐めたり匂いを嗅いだりしただけでそこに含まれるものがわかるのか?」


「えっ。まぁ、今回の粉末はただ素材を粉上にしたものですから余計にわかりやすいですね。」


え?当たり前のことじゃないの?

料理なんかでも通な人はなんの調味料が使われているかわかるでしょう?

何をそんなに驚いているのだろう?なんてレイラは呑気に思うのであった。


その後もあたりを見回し、ユーリア妃が口に入れそうなものをくまなく探す。


「食事は絶対に大丈夫だ。なぜなら俺も同じものを食べているし、この部屋で食べている。用意されている食事は一緒だ。」


「では・・・なんでしょうね・・・。」顎に手を置きながらもう一度ベッド周りを見回す。

そして、私はソレを見つけると「あっ!まさかね・・・」と思いながら手に取り蓋を開けて中身を確認する。


(・・・当たってしまった。)


「うん、これです・・・。」と言ってバージルに手渡した。


「そんな・・・。」ユーリア妃は信じられないという顔をしてソレを見つめる。

無理はないだろう。毎日いや、毎時間と言っていいほど口にするそれはまさかの「ティーポット」だったのだから。


バージルを包んでいたオーラが一瞬で変わるがわかった。

私でも後退りをしてしまい、ハルトがバージルに対し声をかける。


「ここで怒っても解決はしませんよ。」


「あぁ」バージルは頷き一度深呼吸をすると、とユーリア妃の頭を優しく抱きしめ、「もう大丈夫だ。今まですまなかった。」と謝った。


そして、レイラの方を向き「ありがとう」と頭を下げる。


ユーリア妃によれば大体の犯人の目星はついているそうだ。

それはそうだ。毎日用意してくれているティーポットなのだから、ユーリア妃も何度も目にしているだろう・・・。


「レイラ、ユーリアを治すことはできるだろうか?」


真剣なまなざしで私を見つめるバージル。


「はい。可能です。材料の入手が困難なものがあるので少し時間はかかりますがこれ以上毒を摂取しなければそれほど進行はしないと思いますので・・・」


「どんなものだ?医療施設に、ある程度の素材はそろっているはずだからそこを見てもらってから足りないものは私も同行して取りに行こう。」


(え、国王が直々に一緒に行くの?!私のお腹が持ちそうにない!それはない!!)


「バージルはユーリア様の傍にいてください。毒がばれたということが広まれば、黒幕が動くかもしれません。困難な素材があるなら私が同行します。これでも騎士団長ですからね。そこら辺の兵士よりは強いですよ。」とハルトは私の心情を察してくれたのかはわからないが、そう言ってくれたことによりレイラの内心はとても助かった。


「確かに・・・それはそうだな。ではハルト頼めるか?」

渋々と言った感じでバージルはハルトの提案を飲む。

正直、素材を取りに行くことになるのは確定だ。取りに行った先で魔物が出てきて戦闘になっても面倒だし、このあたりの土地勘がレイラには全くないので非常に助かる。


「じゃあ、ハルトその時はお願いしてもいいかな?忙しいのにごめんね。」


ハルトは「それぐらいのこと構いませんよ。」と笑顔を見せてくれた。

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