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7.ハルト・バートンリッヒの心情

ハルト騎士団長目線です

 私は、1000年前に吸血鬼を倒した末裔である。

バートンリッヒ家に古くから伝わる書物の中に吸血鬼の転生を記したものがあった。

正確な日付はわからないが、大体この辺りだろうという予測がありそれは私の代であることが産まれたときからわかっていた。


そのため、父と母は私に厳しく教育をしたが、その分愛情を注いでくれた。

私は、歴史上最年少で騎士団長という座につきバートンリッヒ家の後継ぎでもあるわけだが、25歳になっても縁談の一つもありはしなかった。


様々な女性から告白をされたが、吸血鬼を倒すまで自分がどれだけ生きていられるかがわからないためだ。

毎日鍛錬を休まず続けてきてはいるが、いざ吸血鬼と戦うときになったら勝てるかはわからないからこそ、これから先共に歩もう人を守れる自信が私にはなかった。


ある日、王からの任命を受け当時吸血鬼が住んでいたとされた城へ調査に来た。


吸血鬼は転生したのちに最愛の人を迎えに行くと言われており、それはおとぎ話として世間に知れ渡っているが、それはおとぎ話ではなく実際に言った言葉だと書物に記されていた。


城についてから、騎士団によって隅々まで調査がされた。

そして、一人の騎士より声があげられる。


「団長!誰かが寝ています!!!」


は・・・?寝ている?こんな城で・・・?

私は驚きを隠せないまま、発見された部屋へと足を進めた。


部屋に入ってからベッドに目をやると、一人の少女がちょうど起き上がったところだった。

少女は目をこすりながらこちらを向き、明らかに頭の上に?を浮かべている。

窓から差し込む太陽光に浴びせられて、女神でも目覚めたのか?と思えるほど幻想的だった。


私は息をのみ込みながら、「あなたはどうしてこんな所で寝ているのですか?」っととっさに作った笑顔でそう語りかけた。


「・・・」


だが彼女は何も答えない。答えようと口を開けるが声がカッスカスだ。

あぁ、喉がカラカラなのか。


「これをお飲みなさい」と私は水筒を渡した。


彼女は頭をペコリと下げ、何も疑わずに手渡された水を飲み干したのだ。

今までこんなに警戒心のない奴を見たことが無い・・・そう私は思った。


水を飲んだ後彼女は、「ありがとうございます。私は・・・」っと言いかけたが途中で止まる。


どうしたんだ?と思って、待っていれば「私は誰?」と言い出したのだった。


率直に思ったのは、彼女が吸血鬼の最愛の人ではないのか?ということだった。

こんな城で1人で寝ていることが何よりも証拠である。

だが、彼女の身体を鑑定してみても 「人間」 ということしかわからなかった。

念のため歯を確認してみてもごく普通であった。


(違うのか・・・?)


そう思わざるしか他に選択肢がなかった。


普通の人間が1000年もこんな所で寝ていられるわけもないのだ。

当たり前のことだ。

では彼女は何者なんだ?その一点に尽きる。


もし吸血鬼が転生し彼女を探しに来た時に、彼女がここに居なければ匂いをたどるだろうと思った私は隠蔽をすることにした。


彼女のみの匂いを消すために、彼女をベッドから立たせ魔法をかける。隠蔽と匂い消しの魔法だ。

これで私たちの匂いや痕跡はわかるが彼女の足はつかないだろう。


そして彼女を王国騎士団本部の医療施設で調べてもらおうと思い立ち、馬車に乗せた。


「いくつか質問をします。わかる範囲でいいので答えて頂けますか?」


「わかりました。。。」


それから王国騎士団本部につくまで様々な質問をしてみたところ、ほとんど何も覚えていないようだった。自分の名前や年齢もわからない。そもそもどうしてあそこで寝ていたのかもわからない。といったように質問をしても「わからない」に尽きるのだ。


ただ好奇心は旺盛なようで、馬車から見える景色に対してあれはなんだと逆にこちらが質問攻めにあった。

馬車の外を眺める横顔は何とも言えないほどきれいだと思えて、太陽にあたって煌めく今どき珍しい黒髪に、印象深い赤い瞳。


始めての感情が自分の心の中をかき乱していくような感覚だった。



****



ようやく騎士団本部につき、イルミナに彼女を見てもらった。

が、結果はやはり一緒で何もわからないということだった。


イルミナは彼女に「レイラ」という名前をつけ歳は18歳前後だといった。

自分が所持する鑑定というスキルは一応持っているだけで、イルミナの方がレベルが高い。そのイルミナが鑑定で自分と同じ答えを出したのだから普通の人間なのだろう。


私はふと考えた。


(レイラはこの後どうしていくつもりなのだろうか。)と・・・


右も左もわからない記憶がない少女をほっておけるかといえば、ほっておけないのがお人よしといわれている私の性格だ。

だが本当にいいのだろうか?何か胸のざわつきを感じたが、そんなものより先に言葉が私の口から出ていた。


「なら、私の家にでも来ますか?」


そうして彼女、レイラは私の家に居候することになった。

レイラに家の中を案内している時だった。彼女は私の目の前で錬金術を使って見せた。

今は絶滅危惧種となった魔道錬金術師だったのだ。


私は言葉を失うと同時に、彼女を他の貴族などに渡したくないと思ってしまった。

これがどんな感情なのか私には理解できないが、拾った猫に情が沸いただけだと自分の心を納得させた。


今思えば、城で彼女と出会ったときにはもう一目惚れをしていたのだと思う。

太陽にあたる儚げな彼女を前にして私は言葉を無くしたのだ。

25年生きてきて初めて美しいと思える存在を目にした私の脳は正常に判断などしてくれない。そうハルトが気づくのはもっと先のことだ。

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