物語の世界
本棚に、しがみついていた。
私は、落ちないように、本棚の棚板をつかみながら、降りていく。
お誕生日おめでとう、という声が聞こえたけれど。私は、必死に、本棚を、つたって、降りていく。
棚の本が、私の上から、降ってくる。私も、泣きたい気持ちだけれど。私も、お別れを伝えたいけれど。
おはよう、の言葉を聞きたくないから、私は、急いで、本棚のはしごを降りていく。急いで、急いで、降りていく。
おやすみ。あなたが、そう言うと、私は、本棚に、本を、静かに戻した。
あなたが。そんなことは、なかった。しなかった。あなたは、本を、つかんだまま、はなそうとしなかった。
眠りについた。