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プロローグ


 ここは王都ヴェローナのある小さな小さな店。


 店に一歩足を踏み入れるとそこには黒い長髪の女性と剣を腰から下げた若者が一人立っていた。


 店内は薄暗く、窓は一応あるものの隣の建物に遮られ日差しはほとんどない。


 辺りを見渡すと壁には古ぼけた絵画、正面には大きめのテーブルと椅子が二つ置いてあるだけだった。


 男は案内された椅子に座ると大事そうに握りしめた袋を膝の上に置いた。



 この店の名前は願叶堂(がんきょうどう)


 その名の通りここは願いを叶える店。


 ここではお金さえ払えばどんな願いでも叶えてくれるという。



 男が座るとしばらくして奥の部屋から顔の上半分を仮面で格下付けた男性が出てきた。


 「初めまして、この願叫堂の主人のトアと申します」


 顔がちゃんと見えないのではっきりしたことは言えないが、声からしてかなり年齢は若いように思える。



 「お客様、本日はどのような用件でこちらにいらしたのでしょうか」


 「こ、この店は金さえ払えばどんな願いでも叶えてくれると聞いてきたんです」


 男はひどく緊張した面持ちで話し始めた。


 「どんな願いでも、というのは少し違います。

当店ではお断りさせていただいている願いが3つございます。


 一つ目は他者の命を奪うこと。


 二つ目は死者を生き返らせること。


 三つ目は一度叶えた願いです」



 「そ、それなら大丈夫だ。俺の願いはその3つには当てはまらない」



 「それから――」


 「まだなにかあるんですか!」


 「えぇ、願いを叶えるには莫大なお金が必要となる場合がございます」


 「それならちゃんと用意してきた。

 そこら中から、かき集めてきた俺の全財産だ」


 男はそういうと大事そうに抱えていた袋をどすっとテーブルの上に置いた。



「あなたのお話をまだ伺っていないので、どの程度お金が必要になるかはわかりませんが、


対価となるお金はすべて最初に用意して頂くことになっています。


 いま足らなくても30日以内に揃えていただければ結構ですが、


 もし30日を超えてもお金が用意できない場合はこの契約は破棄させていただきます。


 ――よろしいですね?」



 男は黙って2度頷いてみせた。


「わかりました。それではあなたの願いをお聞かせください」







 この世界のすべてはお金で解決できる。


 そんな事を言われたら誰もが必ずといっていいほど否定するだろう。


 もちろん僕もそうだった。


 金で解決出来ない事なんて沢山ある。


 確かにそう思っていた。


 あの力を手に入れるまでは――。


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