フィヨルギュンの過去
遅れて申し訳ない。
次話はもっと早く出せるようにします( ;´꒳`;)
フィヨルギュンという男の過去を語ろう。
彼は貴族ウォスト家唯一の男としてこの世に生を受ける。将来のウォスト家を背負う人物ということもあり、一家総出で大切に育てる。
そこまでは良かったのだが、いかんせん彼らはフィヨルギュンを大切に育てすぎた。
彼が欲しいと思うものを全て貴族の力に物を言わせて買い与えてしまったのだ。流石に幼少期ということもあり、そこまで叶えることは難しくない。
だが年を重ねるにつれその願いは次第に困難なものへと変わっていく。例えば、
[この国の王女と結婚させろ]や、
[失われた聖剣を持ってこい]などなど。
彼らはやっとその時気づく。
彼を甘やかしすぎたことに。
もう手遅れだった。
そうしてフィヨルギュンという名の欲望の塊が誕生した。
当時ウォスト家は市民のために慈善活動などの善行を積極的に行っており、民からの信頼も厚く貴族の中で随一の勢力を誇っていた。
フィヨルギュンが当主となってからその体制は徐々に変化していく。
面ではこれまでと同じように善行を続ける。
しかし裏では悪行をしていた。欲望の限度がないため次第にその行為はエスカレートしていく。
そんな中フィヨルギュンはある一つの目標を見つける。誰もが一度は必ず思いつくこと。
それは自身が王となりアースガルズ王国を支配すること。一国の王ともなればほぼ叶えられぬことは無い。
フィヨルギュンはさらに欲望を加速させていこうとするが、そんなに人生、自分の思い通りにいく筈がない。自身が裏で行っていた悪行の数々が遂に敵対関係であった貴族にばれ、告発されてしまう。
そうしてウォスト家は取り潰しとなり、フィヨルギュンは処刑されることに決まった。しかし女神は彼を見捨てない。
処刑される前日、王に秘密裏に呼び出され、一振りの剣を渡される。それは国宝。
そしてある提案をフィヨルギュンに持ちかける。この剣と同等以上のものを我の所に持ってくればと貴様の全ての罪は許され、ウォスト家を再興させられる、と。
一瞬、王なりの情けに思える。
否。
王は人間を内部から破壊するの好む。今回はそれの延長上で、一旦情けを与えたつもりで、フィヨルギュンの精神を破壊する、非常にタチが悪いものだった。
ところで当主がフィヨルギュンに変わってからもウォスト家の支持は凄まじい。
それこそ王を凌ぐほどに。
今回の事件が起こらなければ民の支持は相変わらずウォスト家が締めていただろう。
王の言葉を聞いたフィヨルギュンが俯き身体中を震わせる。それを一目見た王は歓喜する。
やっっっっっっっとあの忌々しい貴族を絶望に叩き落とせた。なんて甘美なのだろう。
しかし王はフィヨルギュンという男の真価を見誤っていた。この程度で折れる人物がウォスト家の当主などやっていられない。
彼もまた王と違うベクトルで狂っていた。
フィヨルギュンが俯き震えた理由それは・・・
歓喜がこみ上げ、抑えようとしてもニヤける自身の顔を王に悟られないため、だった。
国宝の剣と同等以上のものさえあればこの地に舞い戻れる。
舞い戻れば、王となれる。
王となれば、自身の欲望を満たすことが出来る。
そんな風に都合よく解釈していた。
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王都に居た頃よりさらに欲望の塊を肥大させたフィヨルギュンはエイン村へと追放される。
たった一人の男の欲望を元とする火種がエイン村を燃え尽くさん、と機会をうかがっていた。
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