宿探し
遅くなってすみません。
結局5時間ほど書くのに掛かりましたw
今回は前回よりコメディがましましです。
結構面白いと思います(多分)
では、どうぞw
「ここがエイン村ね・・・やっと着いた〜」彼女は心底嬉しそうに背伸びしながら言った。「おつかれ様」グラムが彼女を労うように言う。
流石に二日ほぼ休憩なしで歩き続けるのは、ただの村娘にとって精神的、体力的にもさぞかし辛いものだっただろう。傍から見ればきっと賞賛されることだろう。
さて、この村に辿り着いたはいいが、ここから先どの村を通って王都に行けばいいのか見当もつかない。よって情報収集もかねて今日は宿に泊まろうと決め、その場に崩れ落ちそうになっている自身を叱咤し、重い足取りで宿へと向かおうとした。
数十分後。「ええっと・・・さっきの角を右に曲がったから、そのあとまた右に曲がって・・・あれ左?んんっ?」そう道に迷っていた。
「ねぇまだなの?」グラムが呆れたように言う。
「ち、ちょ、ちょっとまって」「も、もう少しで着く・・・・・?はず」
「それ、さっきも言ってたよ」「あ、あれぇ~ソウダッタ?」彼女は明後日のほうを見る。
「はぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・」
彼女が重度の方向音痴・・・なのではない。それもそのはず。
エイン村の入り口にはごくごく簡略された地図しか表示されておらず、加えてこの村はかなり道が入り組んでおり、土地勘がないと、自身の行きたい場所にすらいけないまるで迷路のような町として有名であった。
これは初めて訪れた人が必ず経験することだろう。彼女もまたその内の一人であった。
この時点で宿に近づくどころか徐々に離れていっているなんて誰も知る由がなかった。
こうなってはこの村の人に聞くしかない。彼女はそう決意し、この村の住人っぽそうで話しかけやすそうな少女を見つけ宿への道のりを訪ねた。
「えっと、この道をまっすぐ歩けば、すぐ着くわ」そう親切に教えてもらった。「本当に、本当にありがとうございます」土下座する勢いで頭を下げ感謝の気持ちを伝える。
「いいのよ、気にしないで仕方のないこと。この町は外から来た人にとっては過ごしにくい風になってるの、逆に慣れちゃえばへっちゃらなのよ。」少女は茶目っ気にそう語り「この村を満喫していってね」手を挙げて去っていった。
いい人だったなぁ。そう思いつつ、宿へと向かった。その道中彼女の脳内では、水浴びできるかな?ご飯は美味しいのかな?などと、次の町のことはほったらかしにして宿のことだけに集中していた。そんなことを考えていると宿の前に到着した。
いざ入ろうとすると「そこのお嬢さん、少しよろしいですかな?」と重厚な声が後ろから聞こえる。振り返ってみれば、初老にさしかかろうかと見え、立派なヒゲを生やし、いかにも身分が高そうな男が立っていた。
「いきなりどうしたんですか?あとあなたはどなたですか?」うさんくさそうに聞く。
「これは、これは失礼しました。私、フィヨルギュンと申します。しがない、ただの老人でございます」と自己紹介をし、お辞儀をした後。さらに続ける「ところでお嬢さんの腰にかけてある剣をお見せして頂きたいのですが、どうでしょう?」と丁寧な口調でそう言った。
よくよく見てみると彼の所作は全て洗練されている。どこぞの貴族だろうか?と彼女は疲労が蓄積された頭でそうぼんやり考えた。がすぐそんなはずはないと一蹴する。貴族は基本的に王都ディアンで暮らしている。わざわざ好き好んで辺境な村に住むなんてありえない。さらに魔神が復活し、様々な村が余計、危険に晒されているのに。
そう思いつつ「こんな剣でよければどうぞ」彼女はあっさりそう言い、腰から鞘ごと外しフィヨルギュンに数歩踏み出し、手渡そうとした。
しかしすぐ念話でグラムが文句を言っているのが聞こえる。無論聞こえないふりをする。どうやら彼自身をこんな剣と適当に言われたのが気に食わなかったらしい。全くおかしなところで強情な剣だ。仮にも聖剣なのだからそんなこと気にしなければいいのに。まるで駄々っ子のようだ。あっ、まだ言ってる。聞き流そ。彼女はそう決めた。
「どうされたのですか?」心配そうに彼女を見つめていたフィヨルギュンはそう問いかけた。
それもそのはず彼女の手は剣を手渡そうとする途中で止まっていたからだ。「すみません、旅の疲労が溜まっていて少しぼんやりしていました」彼女は苦笑しながらそう言う。
「そうですか、お疲れ様です」彼は穏やかに言う。一瞬、彼の目が細められたのは気のせいだろうか。きっとそうに違いない。
「心配をかけてすみません」
「いえいえ大丈夫ですよ」
「ではどうぞ」とグラムを彼に渡した。「ありがとうございます」彼はそうお辞儀をしながら言い剣を鞘から取り出した。「ふむふむ・・・」彼が剣を見つめること数十秒。
それから「おぉ、これは素晴らしい剣ですな。相当な業物ですかな?」彼はそう問う。それに彼女は少し間を取り悩みつつ無言で頷く。
グラムがまた文句を言った。そこは即座に頷くところでしょうと。はい、はい、そうだね。彼女は念話を使い、グラムを宥めようとそう言う。また文句を言ってる。引き続き無視の方向で。
その後、目の前の彼の声に耳を傾けた。「ほほぅ・・・やはり・・・。私め実は、コレクターでして是非ともこの剣をお譲りして頂きたい。もちろん対価はきっかり支払います。お金にしましょうか?それとも、なんでもあなたの言うことを聞く奴隷をお望みですか?」
先ほどまでの好々爺の雰囲気が一瞬にして吹き飛ぶ。さながら彼の目は捕食者のようだ。彼女は警戒心を引き上げつつそれは無理だ。そうして否と口を開こうとする。
しかし彼のさっきの態度を思い出した。
あんなにうるさく文句を言うくらいだからそれ相応仕返しをしなきゃ失礼だよね。
そして彼女はフィヨルギュンやグラムが一瞬怯えるほどの凄絶な笑みを浮かべ、こう言い放った。「わかりました、その剣お譲りしましょう」
「「!?」」
フィヨルギュンとグラムが動揺しながらも言葉を紡ごうとしようとするが、彼女はそれらを遮り、堂々とした声でつづける。「その剣は雲すら切ることができ、業物中の業物です。それ相応の対価を支払って頂きます。よろしいですね?」
まるで悪魔のような顔で彼に尋ねる。「ひゃ、ひゃ、ひゃい!」少しインパクトが強すぎたようである。それはともかく言質は取った。
「約束ですよ?これを破った場合どうなるかわかりますよね?フィヨルギュンさん?」彼女は不自然なほどにっこりとした笑顔をしながら彼につめよる。
言うことやることがもはや魔族以上である。「わ、わ、わかっ、わかった。私の信仰する め、女神様にそう誓おう。」それを聞き彼女は機嫌がよさそうにうんうんと顔を上下に振った。「では後日、交換といきましょうか」
「りょ、了解した」彼はグラムを鞘にしまい、手渡しながらそう言うと、いち早く彼女の視線から逃れるためすぐさま走り去っていった。
彼女は彼の背中が見えなくなった後そっと溜息をついた。ふぅぅぅぅぅ〜 どうにか上手く交渉できたぁ〜 結構緊張したけど、なんとか上手くいった。
そして彼女は胸を撫で下ろそうとした。
そう撫で下ろそうとしたのだ。
その撫で下ろそうとした胸はどこにもなかった。
本当にどこにもなかったのだ。
盗まれたのか?いやそんなはずはない。
他人の胸を盗めるなんて聞いた方がない。
焦りながらそう思考を巡らせていると一つの真理に辿り着いた。
《私、実は胸がないんじゃ無いか》と。
実際は存在するのだが服を着ていれば全くわからない・・・・・のに彼女は全く気が付かない。そしていきなり涙目になりながら
「わ、私まだ成長期だもん!!!!!!」と声を張り上げた。
通行人がぎょっと彼女を見つめたのは言うまでも無い。
彼女は絶望感に浸りながらグラムに念話をする。
「ねぇ、ねぇ、ねぇグラム!私まだ成長期よね?まだ成長するよね?成長するよね?」と。
それに対し、グラムは先ほどの彼女の発言にかなりショックを受けたのか「僕って聖剣だよ・・・ね?、契約者に捨てられるとか・・・・・」など、とほぼ鬱になりながら,ずっと独り言を呟いていた。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ!、グラム聞いてる?ねぇってば!!!!!」彼女は旅の疲労などを全て吹っ飛ばし,相変わらずグラムに尋ねつづける。
宿の前で繰り広げられる二人の暴走。
それはいつ止まるのか。
はたまた彼らはいつ宿に入ることができるのか。
流石に今日中には入るはず・・・・?だろう・・・・・。
そんな疑問を残しつつ彼らの暴走はさらにヒートアップしていった。
思いつくままに書いていたらシリアスな場面に使用としていたのに、コメディになってましたw次からはもう少しコメディを少なく出来るよう頑張ります(๑•̀ㅂ•́)و✧
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